新潟の映画野郎らりほう

秒速5センチメートルの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
2.9
【恋の詩~現実と非現実】


若者の恋を謳う このアニメの象徴一語を挙げるなら[現実]だろうか。

徹底リサーチに裏付けられ 見落しがちな日常些細を見事掬い上げたその描画群は 確かに実写をも凌駕する「現実」を示している。 しかし描かれる恋愛劇は実コミュニケーション希求には向かない~、美しくも極度にプラトニック(精神的な) 言葉の世界と化し、現実を逸し彷徨うのだ ~ 「非現実世界」を。

ここに恋愛の二極性~交友交歓(現実)と自己世界(精神)の完全な、そして皮肉な分断を見る。 ~どんなに実写を志向しようとも非現実でしかないアニメ上で見るのだ。


青年の美しき孤高世界…、しかしクールでジェントリーなその世界の根底にあるのは むせ返る様なナルシシズム<自己愛>と秘匿的童貞イズムだ。 ~ 外面を気にし、失敗・傷付く事を恐れた ある種引きこもりにも通ずる現代若者像の即時提示をも内包しつつ、誰にでもある些細な痛みを映画は呼び起してゆく。 ~




《DVD観賞》