Ricola

自由の幻想のRicolaのレビュー・感想・評価

自由の幻想(1974年製作の映画)
3.7
たまに見る、突拍子もなく舞台が変わり続ける夢の中にいるような映画だった。
そんな夢の中では、一般的にみなされている常識や倫理といったものは通用しないけれど、至ってリアルな世界と地続きなテンションで話は進んでいくことが多いと個人的には感じる。

そういった夢と同じように、この作品も観始めたばかりは戸惑うばかりだったが、だんだんとこの不思議な世界にやみつきになっていった。


警察学校にて「風習は変わりゆくものだ」と教授は話す。
この言葉がこの作品の根底にあるものなのかもしれない。
裕福な家から病院、宿泊施設、警察学校へなど…関わりのある人物から人物へと、舞台が移り変わっていく。

怪しげな男から少女が受け取った、風景写真に親は不快感を示す。
修道士たちはタバコを吸うしお酒を飲むし、賭け事もする。
しかし賭けるのはお金ではなくちゃんとお目鯛というのが笑えた。
狐が出ると軍隊が出動するほどの騒ぎになる…。
このように、一般的な常識には当てはまらないことが、当たり前のようになされていくのだ。

食事(?)シーンや刑事裁判など、我々の生活に密接に関わる部分はあからさまに「常識」と異なるので、より笑えてくる。
それから特に印象的だったのは、「誘拐事件」のくだりである。
その「事件」の目的や意図がもはや欠けているのだ。
会話や「捜索活動」が堂々巡りになるのは、まるで『皆殺しの天使』のテーマのようである。

このように、めくるめく場面転換がされていくので、ついていくので精一杯だった。
さらに情報量が多くテンポも速いため、観終わった後はまさに夢から覚めたような気分になった。
今まで考えたこともない、「常識」を皮肉ったぶっ飛んだ世界に圧倒されるばかりだった。
Ricola

Ricola