R

秘密と嘘のRのレビュー・感想・評価

秘密と嘘(1996年製作の映画)
5.0
ひっさしぶりの鑑賞。これで6回目となりましたが!!! すばらしい!!! 素晴らしすぎて、えええええ!!! こんなに良かったっけ??! と衝撃を受けながら見ました。文句言うことなしの五つ星!!! 終盤は涙止まらず、ひさびさに嗚咽しまくってた🤣 こんなに泣いた映画いつぶりやろ。2時間20分というそこそこの長尺やけど、あっという間やったし、一瞬たりとも集中が途切れることなく、完全にのめり込んでた。注意力散漫なこのボクが!!! 冒頭、墓地をバックに重厚な弦楽器が淡々と流れ、葬儀に参列している人々の中、主人公の一人、若い黒人女性ホーテンスが涙を流しながら立っている。いきなり映画が重々しい死から始まるのでびっくり。数年前に育ての父を失い、このたび育ての母を喪ったホーテンスは、数日後、役場に向かい、生みの親を探し始めます。職員に資料をもらい、目を通すホーテンス。おや、何かの間違いでは、と職員に尋ねる。母親の人種欄に「白人」とある。いや、間違いはない、それはぜんぜんあり得ることでしょ?と。一方その頃、まさか自分のことを探されているとはつゆ知らぬ、生みの母シンシアは、いつもイラついている娘ロクサーヌに邪魔者扱いされ、他に心許せる人もおらず、工場勤めの貧しい生活を狭いぼろ家で送っている。唯一の肉親の弟が数年ぶりに訪ねてきたくらいで、それ以外はまったく孤独な生活。まず本作の最最最大の見どころは、この母シンシアを演じるブレンダ ブレシンのあまりにも見事なるパフォーマンス。細々といちいちいろんなことにハイピッチな声でピーチクパーチク口出ししてくる鬱陶しい空気の読めない悲惨なおばさんを、これほどのリアルさで演じられる女優さんが他にいるでしょうか。しかも、このうざさに、まったく大袈裟になることなく、絶妙な可笑しさがブレンドしている。悲惨さと可笑しさが双方を高め合っているが故に、真に悲惨であり、見てるのがつらくなってくる。シンシア ローズ パーリーは、明確に映画史にその名を刻んだ、真の悲惨キャラであろう。娘のロクサーヌも、ボテっとした体軀に、洗練のかけらもない表情、所作、喋り方、バサバサの髪、顔は下手したら美人になれそうな片鱗が見えるのに、変な顔にしか見えない。インパクト最高級の親子です。そしてもう1組、シンシアの弟モーリスの夫婦。こちらは比較的裕福な生活をしているのだが、奥さんのモニカがひどい生理痛で常にピリピリ、そんなに旦那につらく当たる?ってくらい当たりまくっててかわいそう……といった現状。ある日、意を決してホーテンスは、シンシアに電話をするのだが……という流れで、DVDのジャケを見ると、少し展開が読めてしまうのでありますが、そんなことはすっかり忘れて、彼女たちのアクションとリアクションを固唾を呑んで見守らずにいられない、切実なリアリティの緊張感と焦燥感がたえず漂っている。特に、ふたりが初めて出会い、喫茶店に並んで座って話をするめちゃめちゃ長いワンカットのエモーションの流れがスゴい! 演技がすごすぎて二人から一瞬たりとも目が離せない!!! 特にシンシアのローラーコースターのごとき感情の揺れ。ノータリンのアホなのを剥き出しにしながら、そうなる以外にどうしようもなかったであろう背景をありありと感じさせる、本当に、本当に、すごい演技。見えないものを見せるってほんますごいと思う。そして、ここから思いがけぬホッコリ展開。だが、彼らの抱える秘密と嘘は、時限爆弾のようにそこに在り、それは爆発するまでの仮初のリユニオンなのである。シンシアの弟モーリスは、写真屋さんを営んでて、多くの家族や会社員や個人の写真を撮っているのだが、彼らの写真に撮られる様子が、まさにスライスオブライフ、人間関係の表層と深層を鮮やかに切り取っている。 すばらしいショットの数々。そして、後半にもうひとつ、非常に長いショットがあって、ここもハッピーでありながらぎこちなく、楽しいけど気まずい、その何とも言えない雰囲気を、まるで彼らと一緒にそこにいるように味わえる。今回初めて気づいたねんけど、一番手前の空いてる椅子は、見てる僕たちの席なんすねー。そこから皆さんの様子を、まるでリアルにそこに居るかのように見せている。何度も見てるのにあまりに自然でリアルなので、いまごろようやく気づいたわ。で、あー、まぁ、なんとなくいい感じやん、ヒヤヒヤするけどうまくいってるやん、て安心したところで、ほろ酔いのあの人が、ついにやってしまいます……ここから見ていられない修羅場に突入。マジで、こんなに生々しい家族のドラマ、人間のどうしようもない感情のぶつかり合い……見たことない。だからこそ、彼のあのことばが、ガツン!!!と心の深く深くに響く。このシーンの演技はみんなほんとに素晴らしい。特筆すべきは、シンシアの娘ロクサーヌと弟モーリスの同僚の若い女の子。この子とかまさかの家族のゴタゴタに巻き込まれて、死ぬほど気まずい思いをさせられてるのに、なんて人間らしい……これを見ると、日本人ってほんまに自分さえ良ければ、その場さえしのげれば良いって思ってる人ばっかりだなー、と残念な気持ちになる。まぁ、それは置いといて。嵐のようなヒューマンドラマをくぐり抜け、彼らはいったいどんな結末を迎えるのか。もー僕は涙が止まりませんでした。あとからあとから溢れて溢れて。最後のホーテンスとロクサーヌの表情にとめどない涙。ほんまに素晴らしい。全編音楽もめちゃくちゃ好みやし。あと、今回見ておもしろいなと思ったのが、それと感じさせずに、全体的にうっすらと、しかしたっぷりと、セックスの話が出てくるところ。確かに、生って性をきっかけとして生じる現象やもんね。死から始まり、性と生を経て、生活へと行き着く。是非とも多くの人に観てもらいたい、激推し人生の一作。
R

R