フジツカ座

月とキャベツのフジツカ座のレビュー・感想・評価

月とキャベツ(1996年製作の映画)
3.0
六月に入っても夜はずいぶん涼しくて、なんならちょっと寒いくらいです。
春にも夏にも属さないふんわりとした夜、冴返った風を感じてふと空を見上げると、アイスクリーム色をした月が静々と浮かんでいて、ああ今夜は月がきれいだなあと思ったそのすぐあとで、少女が月明かりに照らされて踊る姿を見た気がしました。

ん?と思って目をこすってよく見るとそれは、華奢な木の枝がただ風に揺れてるだけでした。

月に笑われたみたいな気がしたぼくは恥ずかしくなって、いつもより少し早歩きで帰りました。

つって(๑´ㅂ`๑)


「月とキャベツ」は夏の映画だけど、夜の空気感がどこかヒヤッとしてて、ここのところの夜風と似てる気がして観直してみよかなと思いました。

それほど大きな情報量のある作品ではないと思います。というか、殆ど無いって言っていいと思う。
「one more time,one more chance」が生まれるまでの過程を、ただシンプルに描いている。なーんだ、退屈な映画なんだなあってひょっとしたら思うかもしれないけど、名曲がひとつ生まれるまでだけを映画で描くって、ぼくはすごくロマンチックだなあって思います(๑´ㅂ`๑)

うん。思います。

ただ。

たーだ!!


どうしても歌詞を重ねちゃうよね。
この曲の詞はどっちかっていうと描写が細やかで、 例えば、くいちがうときはいつもぼくが先に折れる、とか、探す場所が「向かいのホーム」や「路地裏の窓」「旅先の店」「新聞の隅」とかだったり、「桜木町」や「急行待ちの踏切あたり」だったりね。
この細かさこそが、きっとリアリティや共感を生むのだろうと思うのです。作品の中でこの描写に結びつくシーンは無くて、唯一あるとすれば、転調の詞。この転調の詞ありきで始まった映画なのかもしれない。

それだったらいっそ映画では詞をつけなきゃよかったのにね(๑´ㅂ`๑)それでも充分だった気もしました。

贔屓目で穏便に薄目で見てもツッコミ所は多い映画ですが、華奢な木の枝の少女がピアノの旋律と共に風に揺れるように踊るシーンは美しいなーって思いますし、またふとした月夜にそれを思いだして、そのシーンが観たいが為だけに、再生ボタンをぼくはまた押すんだろうな〜って、思いました。
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