もものけ

エンゼル・ハートのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

エンゼル・ハート(1987年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

欲望を叶えるための代償は、肉体を持つ現世では払い切れないほど、高いものなのねぇ〜……。

ブルックリンの私立探偵ハリー・エンゼルは、弁護士と名乗るワインサップから依頼人を紹介される。
謎の依頼人ルイス・サイファーから、借りを作った歌手ジョニー・リープリングを探して欲しいと依頼を受け、ハリーはハーレムへ情報を集めにゆくのだが、次第に彼の周りに不穏な出来事が起き始める…。


感想。
個人的オカルト・サスペンス映画の最高峰です。

ダークな映像と、ブルースの旋律で独特の雰囲気を演出して、尋ね人を探す私立探偵のハードボイルドオカルトサスペンス映画とも言える作品で、当時世界一セクシーな俳優の一人と言われていた時代のミッキー・ロークが、これまた格好良く素晴らしい演技を魅せてくれます。

歌手ジョニーを探す過程で出会う怪しげな関係者。
次々と身の回りで起きる殺人事件。
次第に悪夢が身の回りへと現実になり始めて、ハリーが辿り着く結末までのプロセスが、無駄のない演出で上手く作られています。
シーン毎に突然衝撃的な展開が起きますが、ハリーの視点で描かれる為に、鑑賞者として同じ混乱を体験出来る演出は秀逸です!!

ハーレムで神の名を解きながら、信者の財布を求める神父。
ルイジアナの怪しげなブードゥー教の儀式。
キリスト教の教会で落ち合う魔王。
バプテスト派の川での洗礼儀式。
ハリーの人探しの周りに常に現れる宗教の価値観が登場してきて、ハリー自身は無宗教であると告げるのですが、引かれたレールを辿って記憶を呼び戻す過程で、その宗教の中からは出られないハリーのもがきみたいなものを感じました。
ルイス・サイファーが「宗教は人間の愛よりも憎しみを募らせるものだ」とハリーに語るシーンなどみると、まやかし的なもので、堕落しているとして人間を縛り付けているだけの枷のように感じました。

ジョニーは黒魔術で魔王と契約して、魂を代償に名声を手に入れますが、魂が惜しくなって身代わりとしてハリーを黒魔術の儀式で心臓を取り出して喰らい身分を奪う予定が、戦争で記憶を無くし、一見まんまと逃げられたように見えますが、魔王の手の中で遊ばれていただけ。
出し抜くはずが、罰として地獄で永遠の責苦を受け続けます。
魂は不滅で魔王のものとして、卵を食べるシーンでメタファーとして語っていますが、罰としては最悪のものです、不滅=永遠に苦しみを受けるなんて…。
ラストシーンのエレベーターが、音をたてながらジョニーを乗せて降下していくシーンが、その比喩として素晴らしい演出です!!
まさに地獄へ堕ちていくシーンで、ジョニーのヒットソングが悲しいメロディーとなっています。

私は気づかなかったのですが、解説など読むと、エピファニーの子供がラストシーンでジョニーを指差しますが、孫に最後に告発されるシーンとして、ジョニーの苦悩を表現しているとか。

オカルトサスペンス最高峰として、素晴らしい作品に5点を付けさせていただきましたが、10点ないとスコア出来ない名作でした!!
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