新潟の映画野郎らりほう

バベルの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

バベル(2006年製作の映画)
5.0
【無理解の世に 人と人が解りあう無上の喜びへの気付き】


BABELの塔に準え意思伝達の希薄が主題な為、作品も明確なメッセージの発信を控えている。 つまり作品の想いを我々に届けない事。我々に「解らない」と感じさせる事。
その為一見不必要とも思えるエピソードまで交え 曖昧さを貫く作りとなっている。

反面、もう一つの主題である【届けたい想い】も存在する。 真逆の主題を同時にどちらも消滅させずに成立させる事がいかに困難な事か。
『無理解に溢れた世界の中で 人と人が理解しあえる無上の歓びへの気付き』とゆう最主題への到達には メッセージが届きすぎても、また届かなくてもいけないのだ。

監督のメッセージの希薄感と訴求感。 相反するこの二つに気付いた時、作品の真意に触れるだろう。






《追記》
4エピソードは度々切り替えを見せるが「逃げる少年達から かくれんぼする姉弟へ」、「鶏の流血からバス中の出血へ」、「ブランシェットの絶叫から凛子の無音へ」と異なるエピソードが 透過移行するクロスカッティングが見事だ。 またエピソード単体の描写も素晴らしく、中でも凛子がクラブ内で見せる恍惚・トリップ、ストロボ表象される直後の喪失・絶望、他 キャメラと同期する公園遊具の揺れ、モロッコでの排尿中の愛撫等 殆どの場面に唸らされた。 俳優陣も素晴らしく 中でもブランシェット ~なんとコーラ缶を開ける「プシュ」にも彼女のストレスの表出が現れている事に驚愕。 そしてそれを上回る存在感を示すのが凛子だ。 その演技も作品中随一だが、凛子に施される演出が他エピソードを圧倒しており より印象深く、私には彼女が作品の中心に位置し その他エピソードが付随する様に思えた。



それまで描かれた全苦悩を浄化するラストシークエンスの美しさは 映画屈指であり、ただ〃震えた。 至高の映画体験。




《劇場観賞/生涯最高峰級認定》