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007/ダイヤモンドは永遠にのmurabonのレビュー・感想・評価

007/ダイヤモンドは永遠に(1971年製作の映画)
5.0
シリーズ第7作。
5作目の「007は二度死ぬ」で一度降板したショーン・コネリーがまさかのカムバック。

前作「女王陛下の007」でハード路線となった反動が強すぎたのか、あらゆる面でふざけすぎてしまった迷作。
シリーズを順番に見ている真面目な方々が挫折しそうになる難所の一つがこの作品かもしれない。

スタッフ、役者共に本当にやる気があるのか?ヤケクソなんじゃないかと思わせるほどに全体的に緩い雰囲気が漂う作風で決して映画として良い出来では無いですが、ショーン・コネリー最終作であることや、2015年に「スペクター」で復活するまでは、スペクターが正式に登場するの最後の作品となったことなどシリーズの歴史として外せない作品です。

原作小説は地味な話なので、前半ある程度は原作のプロットが採用されているものの、全く関係ない展開に。
オースティン・パワーズでもパロディにされていた宇宙空間からのレーザー攻撃というダニエル・クレイグ版では絶対に採用されないであろうSF色がたっぷりな敵の陰謀が素晴らしい。
なぜダイヤモンドが必要なのかイマイチ良く分からないが、それも良い。

アメリカがメインの舞台となっていたり、主題歌がシャーリー・バッシーだったり全体的に第二の「ゴールドフィンガー」を目指したところがある。主題歌はとてもかっこいい。
「ゴールドフィンガー」を監督したガイ・ハミルトンが改めて抜擢されたのも、似たような仕上がりを期待されてのことだろう。
シリーズ最多の5作品を監督したジョン・グレンに次いでシリーズ4作品を監督したこの人。どうも締まりの無い演出が多く好みは分かれるが後のロジャー・ムーア時代に通じるコミカルなテイストを無理矢理にでもシリーズに取り入れたところは結果的にシリーズ存続に大きな影響を与えたと言える。
このおかげで良くも悪くも子供も見れるシリーズになった。ゴジラシリーズと同様に、幅広い年齢層に見てもらえる作風になることはシリーズが続くためには必要不可欠。
シリーズとは関係ないがガイ・ハミルトン監督の「レモ/第1の挑戦」は名作である。作中の自由の女神で展開されるアクションは本当にすごい。

本作のショーン・コネリーは体型も仕上がってなければ一作目から着用しているカツラの装着具合もいまいちであるが、やっぱり元祖ジェームズ・ボンドだけあって、それを上回る魅力がある。画面に映るだけでちゃんとジェームズ・ボンドだと思えるのはすごい。
アクション面で言えば狭いエレベーターでの格闘シーンはけっこういい動きをしている。
PS2の「007/ナイトファイア」でもオマージュされていたペントハウスにエレベーターで登って侵入するシーンは幻想的で雰囲気が最高。
ザンパーとバンビなるビキニの女性殺し屋二人に襲われるシーンは冷静に考えると一体何なんだこれはと思えるシーンだが、太ももで首を挟まれて苦しいというよりちょっと嬉しそうにしているコネリーを見ると微笑ましくて羨ましい素晴らしいシーンである。

ブロフェルドとの決着も「キングコング対ゴジラ」のエンディングのようなプロレス感があって味わい深い。
最後にボンドが飛び込みスキルを披露するシーンは海軍中佐であることを思い出させてくれる、さりげなく良いシーンである。

ボンド・ガールのジル・セント・ジョンは完全にアホの子であり、キャラクターとしての魅力には欠けるが、色んな衣装を披露してくれて、どれも可愛らしく素晴らしい。何もできない峰不二子っていう感じがある。

ブロフェルドは演じる俳優は3作品続けてまた変更になった。整形を繰り返しているという設定はあるのだろうが、演じているのが「007は二度死ぬ」に出てた人なんで初心者の方は混乱するかもしれません。同じ俳優が違う役で登場するのは、このシリーズでは良くあることなので気にしないようにしましょう。
途中でブロフェルドが女装するという、どういう意図なのか全く分からないとんでもないギャグがありますが、前作で首を怪我したときのダメージが脳に残ってるので仕方ないし、まぁまぁ面白いので良いでしょう。

MI6のいつもの面々について。
マネー・ペニーはあんまり見られない出張シーン、コスプレがあるので貴重です。
Qについては大した装備品はないですが、カジノで楽しそうにしているシーンは良いですね。スロットを当てるやつはすごく欲しい。

ショーン・コネリーの007の中では一般的には評価が低い本作ですが、酒のつまみとしては「007は二度死ぬ」に匹敵するくらい美味しい作品なので秋の夜長にツッコミを入れながら見てほしい一本です。
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