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007/死ぬのは奴らだのmurabonのレビュー・感想・評価

007/死ぬのは奴らだ(1973年製作の映画)
5.0
ジェームズ・ボンドが身に付けているものって気になっちゃいますよね。スーツから靴から男の憧れが詰まってます。
特に時計は毎回気になるところです。

ピアース・ブロスナン以降の作品ではオメガが採用されています。ダニエル・クレイグ版から見始めた最近のファンの方はボンドウォッチといえばオメガのイメージがあると思いますが、初期はロレックスが主に使われていました。
「カジノ・ロワイヤル」の劇中ではわざわざ列車内のシーンで「ロレックス?」「いや、オメガだ」っていうやり取りまでありましたから、より印象に残りますよね。

「ゴールドフィンガー」のプレタイトルシークエンスでロレックスサブマリーナが大映しになります。ボンド柄とも呼ばれるNATOベルトを装着しており、スペクターでもブランドこそオメガでしたがこのスタイルがオマージュされていました。「ゴールドフィンガー」では、よく見ると時計のラグ幅とベルトの幅があってなくて隙間ができてしまっているのがちょっと気になりますね。😅

ロジャー・ムーア時代はセイコーが使われている作品もあり日本人としては嬉しいところです。
本作「死ぬのは奴らだ」ではロレックスサブマリーナが大活躍。磁石のギミックを使うときに文字盤が赤くなるあたりは「スペクター」でもオマージュされていました。
最新作では時計に特殊な機能が設定されているのか、どのような活躍を見せてくれるか注目ですね。

さて、シリーズ第8作となる本作。まず「死ぬのは奴らだ」っていうタイトルがカッコよすぎますよね。原作を翻訳した井上一夫先生のセンスは素晴らしいです。
原作はカジノ・ロワイヤルに続く2作目の小説なんですけど、これが本当に傑作なので機会があったら是非読んでいただきたいです。映画12作目の「ユア・アイズ・オンリー」の海中引き回しとか、16作目の「消されたライセンス」のフィリックスが鮫に喰われるとか、水槽が並ぶ中での戦闘シーンとか、他作品の元ネタになってる場面が出てくるので、そういった意味でも楽しいですね。

ボンド役にはシリーズ最多の7作品に出演することとなるロジャー・ムーアが就任。前作のショーン・コネリーよりも圧倒的に若々しく見えますが、実はコネリーより歳上というのが驚き。

本作のボンドはお酒はウォッカ・マティーニではなくてバーボン。タバコじゃなくて葉巻を吸ったり、クライマックスではワルサーPPKを封印してダーティ・ハリーからアイディアを取ったのかマグナムを使うなど、コネリーのモノマネになって比較されないように気を使ってるのが特徴ですね。

作中ではオカルトブームに乗って占いとか、ブードゥー教などが登場する不思議なテイストがあります。敵についてもほとんどが黒人という攻めた設定です。

プレタイトルシークエンスでは、ボンドが登場せずオープニングクレジットへと続いていきます。新生ボンドのお披露目を焦らす演出ですね。
小さい頃に親から007は歌が始まる前が一番面白いって言われて育った私ですが、本作をレンタルビデオで借りてきてワクワクしながら見た時、なんのアクションもないしつまんないじゃん!お父さんの嘘つきっ!って思った記憶があります。

本作の主題歌を担当するのはポール・マッカートニー。「ゴールドフィンガー」劇中にてボンドから「ビートルズは耳栓をして聴くべし」とか言われちゃってたのに仕事を引き受けてくれるあたり素晴らしい方ですね。
この主題歌はシリーズでもかなり人気が高いですが、私も大好きです。大胆な転調が癖になりますね。「アメリカン・ハッスル」でジェニファー・ローレンスがこの曲を歌うシーンは最高です。

オープニング後は珍しくボンドの自宅が登場。「スカイフォール」は実家なんで置いといて、他にボンドの自宅が登場するのは一作目の「ドクター・ノオ」、24作目の「スペクター」くらいでしょうか。
本作珍しくQが登場せず、ボンド自ら時計のギミックやコーヒーメーカー?などをMに紹介するという構成。このシーンでボンドが淹れるコーヒーがめっちゃ皿にこぼれてるのが気になりますね。その後のシーンでは溢れた形跡はなくなんですけど笑

ボンド・ガールのジェーン・シーモアはシリーズでもベスト級の美しさです。美しい上に可愛いです。やばいです。こういう美しい姿を永遠に残せるのが映画の良いところですねぇ。
彼女が使っているタロットカードですけど、思いっきり007っていうロゴが入ったデザインのカードになってまして、バンダイさんもびっくりな露骨なグッズアピールには誰しもがツッコむところですね。

今作、敵のキャラが結構立ってて印象に残ります。
敵のボスであるカナンガは今年亡くなられてしまったヤフェット・コットーが演じています。
義手を武器に使うティー・ヒーも印象的ですが、登場場面こそ少ないにも関わらず謎の男サメディ男爵が特に印象に残ります。死んだはずなのに何故か復活するこの男、最後の最後まで登場し何とも言えない余韻を残します。
ニンテンドウ64の名作ゴールデンアイでも隠しステージの「エジプト」にボスとして登場、本作を意識してか3回だったか倒さないとクリアにならない上、クリア後のムービーでも復活して高笑いしているのが記憶に残っています。

演者がコロコロ変わるフィリックス・ライター、本作で演じているデヴィッド・ヘディソンは16作目の「消されたライセンス」でもライターを演じており、現行のジェフリー・ライトを除けば唯一の同役を複数回演じた貴重な俳優です。原作通りに本作中で鮫に食べられなかったり分を「消されたライセンス」に持ち越した感じでしょうか。
あと目立つのはペッパー保安官ですね。人気があったのか分かりませんが次回作の「黄金銃を持つ男」にも登場します。ペッパーだけにぺっぺぺっぺつばを吐くのがきちゃないですね笑

アクションシーンは結構特徴的な物が多い本作。
飛ばない飛行機チェイスシーンでも教習を受けに来たおばあちゃんを隣に座らせることで面白いシーンになってます。
ボートが中を舞うチェイスシーンはちょっと単調ですが、スタント自体はすごいです。 
ワニの背中を渡る因幡の白兎シーンはすごいですね。メイキングに入ってるNGシーンはマジでハラハラします。

本作は決してシリーズ上位に食い込む面白さがあるわけではありませんが、ボンド役の交代というプレッシャーがある中、新たな試みを様々盛り込み力が入った作品であることは確かです。
独特の魅力を持った作品ですので皆さんもぜひご覧ください。
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