馬井太郎

荒野の決闘の馬井太郎のレビュー・感想・評価

荒野の決闘(1946年製作の映画)
4.5
数あるワイアット・アープ映画の中で、私は、このフォンダ・アープが最も好きだ。親父に連れて行かれた映画館での、オンタイムの記憶は、フォンダのかっこ良さだけが、ほんの少し残っているだけで、他のことはまったく憶えていない。
テレビで放映されると、必ずと云っていいほど、観る。それほど、見どころがいっぱい詰まっているのである。
ストーリーは、シナリオを学ぶ者の良きお手本、俳優達は、役者修行の無言の教師だと言える。
まずは、ウォルター・ブレナンだ。エキストラから幸運を掴んで一躍大出世、アカデミー助演男優賞を三度も受けている。牛の群れを移動させるアープとの初対面、保安官の任に就いたアープと対峙するとき、この迫力には、背筋に悪寒、息を呑む。
西部劇に欠かせないのが、酒場女だ。ドク・ホリデーの情婦チワワ:リンダ・ダーネル。多くを語るまい、一見にしかず。
そして、なんと言っても、ドク・ホリデーは、この人、ヴィクター・マチュアーだ。眉毛の吊り上がった独特の面構えは、後の数あるリメイク映画での同役俳優の誰もが、この人の前では頭が上がらないにちがいない。アープとの初対面が、最大の見どころである。
ワイアット・アープ映画は、そのリメイク数が最も多いのではないだろうか。カート・ラッセル、ケビン・コスナーは、記憶に、まだ辛うじて新しい。が、そのどれもが、このフォンダにはかなわない。それは、主役に加え、それ以外の絶妙な脇役で固めた、監督ジョン・フォードの手腕だったからである、と私は思う。