フジツカ座

人生はビギナーズのフジツカ座のレビュー・感想・評価

人生はビギナーズ(2010年製作の映画)
4.8
なんていうか、こう、、。

とても柔らかな映画でした。静かな光が射す日曜か月曜の朝みたいな。

いろいろちぐはぐして順序がどうのこうのなんてのは本当は関係なくて、上手くいくことばかりじゃないけど、ライオンにはライオンの生き方があってキリンにはキリンの生き方があるように、手探りでさ、まあそれぞれで、うん、それぞれでいいんじゃないかなって思わせてくれる、とっても素敵な映画でした。

時系列を交差させる作りの作品だったけど、この作品のテーマとリンクしてて個人的にはよかったなあと思いました。
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オリヴァー(ユアンマクレガー)がとにかく優しくて、トレインスポッティングでスパッドに見せてたあの表情がずっとある感じ。

ゲイを告白したハル(クリストファープラマー)75歳でストイックにそこへ向かっていきたいっていうハルの意思と尊厳を全力で支えるオリヴァーの愛情の深さ。うちもばあちゃんがそんな告白してきたらどうだろうかと重ねてみたりして。

オリヴァーとアナ(メラニーロラン)の感じもめちゃめちゃよかった。うっとりするような恋の間合い。「私のこと知らないから不安になってるのね。」って言ったあとにするキスや「外の様子はどうなってる?」ってオリヴァーが聞いたあとに、窓辺で見たままの世界を教えるアナのノリ。アナのいない部屋で電話するシーン。執拗に干渉しないけど確実に心はお互いを必要としている感じ。観ててとてもグッときました。

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幼少期のオリヴァーとお母さんとのシーンも好きでした。オリヴァーがちょっと踏み込んだ質問をしただけなのに「あなたはFBIなの?じゃあCIA?KGB?PTA?」と返す。日本の親子では見なさそうな感覚の会話だな〜って。通りすがりにオリヴァーに向けてスッと手をかざすと、呪いがかかったみたいにオリヴァーがくたっとうなだれるノリとか、指ピストルで撃ったときの倒れ方がイマイチとか。美術館で作品と共演しちゃう感性とか。お母さんよかったな。あの感じ20th century womenに継承されてると思います。

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最後に邦題がなんともです。


原題が「BEGINNERS」

そこに(人生は)と付け足す辺りがちょっと野暮ったい気がして、うーんて思いました。観る側が持てる余白を削ぐような気がします。残念。ジャケットからあの黒い字を消してほしい(`∀´)
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