神戸典

人生はビギナーズの神戸典のレビュー・感想・評価

人生はビギナーズ(2010年製作の映画)
3.3
オリヴァーの父親ハルは母親の死後、自分がゲイであることをカミングアウトし、ありのままに最後の生涯を過ごした。
この作品はハルが亡くなった後のオリヴァーとフランス人アナとの関係を移すシーンと、ハルが生きてる頃のハルとオリヴァー、またオリヴァー自身の人間関係を移すシーンが頻繁に移り変わる。
ハルが亡くなった後も、恋人のアナと生活しても、そこには決してなくなることのない穴のようなものがあいていた。
それは父の死という巨大なもので、幼い頃から両親の淡白な恋愛を見てきたオリヴァーは無意識のうちにアナとの関係においてもどうせダメになるからという気持ちが生まれ、心の距離を置いてしまっていた。

しかしハルが亡くなる直前に2人の間でたしかな愛があったことはまぎれもない事実であったことを知る。
それを知ったオリヴァーもまた、アナとやり直す事を決意する。

2人の関係性はそう簡単には変わらない。
それでもこれまで始める前から距離を置き、終わりを見ていたオリヴァーが先のことを見ずに今の気持ちを見つめ、二人で歩んでいこうとしている。

わずかな一歩だが、ハルの最後の全力の生き方がこれまでのオリヴァーを変えたことがわかる。

この作品はとても静かな作品だった。
会話のシーンも静寂の中で二人の感情が言葉に乗って相手の心に届いているようなシーンになっている。
神戸典

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