神戸典

最強のふたりの神戸典のレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
4.0
大富豪だが頸髄損傷により首の付け根から下の感覚を失い、誰かがついていないと生きていくことができないフィリップと貧困層で育ち、薬や強盗に手を染めるドリス。
ドリスは失業手当をもらう為に就活をしたという署名だけもらう為フィリップの介護を選ぶ面接に出向いた。
フィリップを見ても特別扱いせずに普通の人間として接する姿を見て、ドリスは思いもせずフィリップに採用される。
周りの面接にきた男たちは立派な介護の資格を持っていたり、人助けがしたいという者が多く、みんなはじめからフィリップを健常者としてみていなかった。
フィリップにとってどんな介護ができるスペシャリストよりも、同じ人間として接してくれるドリスを求めた。

特に印象的なシーンは、ドリスが豪邸を去る時、初めと変わらず家の前に駐車する者がいた。ドリスが手伝いの仕事を始めた時は少し荒々しく強引にどかしていた。
しかし、家を去るドリスは紳士のように、感情を荒げずにどかしてくれますかと敬語で訴える。
この姿からわかるように、ドリスは成長し礼儀を覚えた。

二人の絆は少しずつ固く結ばれていったが、ドリスは仕事を辞めて家族と向き合う事を決めた。
ドリスと弟が仕事終わりの叔母を迎え入れ、優しく静かに荷物を分けて持ち、家路へ向かうシーンは壊れかけていた家族の修復が始まるような気がした。

ドリスがいなくなり2人の時間はドリスが成長させてもらっていたように見えたが、フィリップもまたドリスの存在に助けられていた事に気づき、生きる活力が弱まっていった。

秘書の計らいでドリスは再びフィリップと会いレストランに行くとフィリップの文通相手を呼んでいた。
100%のドリスの優しさがそこにあった。
ドリスは元々乱暴でありながらも家族思いでフィリップの事も思う優しい人間だったが、フィリップの手伝いを通して周りの人間との関わりの中で、優しさが本物になったのだろう。
また、劇中に流れる静かなメロディーが美しい視覚を聴覚からより芸術的に見せている。

文通相手を呼んだのはフィリップに愛する人を見つけて欲しいという想いとフィリップとドリスのお互いの依存を無くすことにあっただろう。
2人が一緒にいれば間違いなくお互いに幸せである。それでもいつまでも常に一緒にいることは出来ないから本当に生涯そばに居られる人を作るという現実的な内容を含んでいる。

この作品は実話をもとに作られていることから、2人の本当の友情をうまく描いていると感じた。
少しの優しさとユーモアを持つことで自分も相手も気持ちのいい関係でいられるような気がする。

ドリス役のオマール・シーの演技が圧巻である。
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