凄絶。
「サンリオ映画シリーズ」のイメージのままでは観ないほうがいい作品。だってサンリオって、特に幼い女のコ向けのキャラ、商品がほとんど。このジャケのチリンは、サンリオキャラらしい可愛い仔羊だから、うっかり子供が見てしまうでしょうが、それって…。

仔羊のチリンは、羊のみんなと住んでいた牧場で、大好きなママを狼に殺されてしまう。ママはチリンを庇った状態で死んじゃった…。夜中に狼が羊たちを狙ってやってきた時点で、もう観るのをやめようとまで思ったほど、どんな場合でも動物が殺される描写は私には耐えられない。でも、うっかり見てしまったから、もうそのまま続きを観る以外に道はなかった…。
チリンはママが死んじゃって、悲しむよりも、仇を討つ道を選んだ。そしてたった一匹で、ママを殺した憎い狼、ウォーの元に立ち向かった。でもウォーは相手にすらしない。喰べるには小さすぎるチリンだったし、興味も示さず殺しもしない。チリンはこの憎っくきウォーを倒したかった。それには今のままではとても敵わない。そこで幼いチリンが考えたこと、それは、このウォーの弟子になって、強くなる術を教えてほしいという事だった…！あり得ない…… あり得ないけれど、私はただただ見守りながら鑑賞するしかない…。ウォーはそんなチリンなど厄介者に過ぎず、ほとんど相手にもしなかったが、チリンはとことんウォーについて行った。ウォーは特別何か教えるでもなかったが、チリンはウォーの行動を自分で見てさまざまな事を吸収していった。ウォーも次第にチリンに、心を開いていったではないけれど、時々ぶっきらぼうながらもチリンに狼ならではの独自の哲学を説く。「生きる事は悲しみを知る事。その悲しみで心の牙を研ぐのだ」などがそれだった。
そして三年の歳月が流れた頃には、あの小さかったチリンは心身共に凄まじい野獣に成長していた。やがてウォーはチリンを、チリンが生まれ育ったあの牧場に連れて行き、羊を襲ってみろと言う。身も心も狼のように成長したチリンはウォーの言う事に従い、その牧場を襲うべく近づく。その時、母羊が仔羊を庇う姿があり、チリンは自分の幼い頃のあの辛い瞬間を思い出してしまう。そして羊を襲おうとしたその気持ちが一瞬にして、これまで師と仰ぎ、やがて父とも思うまでに慕い続けてきたウォーに向けられる…！

ああもうダメこの作品…。涙無しには観ることが出来ない。鑑賞中も、鑑賞後も……。
母親を殺したウォーに弟子入りするなどという手段を選んだその時から、チリンは羊ではなくなった。チリンこそが真の「一匹狼」であり、ママが殺された瞬間から、そしてきっと自分が死ぬまで孤独なんだと思う。もう羊には戻れず、でも狼にもなれなかった。一体何者なの？ チリンは生涯どこにも属することの出来ない獣として生きて行くしかない。本作は、野生の掟だとか、動物界のルールなんかを学べるでもないわけで、とにかく幼い子供が観るにはあまりにもヘヴィー過ぎる。

(原作・やなせたかしさま。)

「生きることは、悲しみを知ること。その悲しみで心の牙を研ぐのだ」

「分かっているな、チリン。この世界はいつも死がつきまとう地獄だ。覚悟はできているな」
「地獄へ堕ちても構わない。命だって惜しくない！僕はオオカミよりも強くなって、お前をやっつけてやる！！」

えぇ〜〜そんなぁ。。(涙)
これ、サンリオ映画だよね…？な、なんて悲しくてやるせない物語なの。。。

お母さんや仲間達と牧場で平和に暮らしていた、ヒツジの子 チリン。首にはトレードマークの鈴。
ある夜、恐ろしいオオカミ ウォーが現れ、羊達を襲う。寝ぼけて逃げ遅れ、1人になり狙われたチリンを覆い庇ったお母さんは、ウォーに殺されてしまった。悲しみのあまり、襲われても逃げ回るしかない自分達の弱さに憤ったチリンは、牧場を飛び出し、ウォーの元へ。彼は、オオカミのように強くなりたいから、「自分を弟子にしろ」と言うのだが……

何も悪いことをしてないのに、どうして殺されなくちゃならないんだ
弱いから殺されるんだ
襲われ、何もできずに殺されるのは嫌だ
強くなりたい

最初は馬鹿にしてチリンを取り合わなかったウォー
だが、どれだけ足蹴にされても、死にかけてもついてくるチリンに根負けしてウォーは戦いの手ほどきをする

一匹オオカミ　オオカミの強さ
強いことは孤独
その意味を、チリンは最後の最後に身をもって知ることになる

ヒツジでもない、オオカミでもない、恐ろしい何かになってしまったチリン
復讐や恨みに囚われてしまう切なさ
行き着く所のない孤独

子供が見ても、怖いとしか感じられない後半の展開
大人になると、凄い何か色んなメッセージを感じてしまう。噛み砕けない、、切ないから

大人になったチリン、この声どっかで…と思ったら、神谷明だ！声が微かに、北斗の拳だ！
ナレーターはトトロ、ウォーは星一徹
原作はやなせたかし…？！愛と勇気だけが友達…というか、お母さんからの愛情を思い出し、ヒツジとして生きていく勇気を持てば良かったんだな、きっと。。
孤独の寒さが沁みてしまう物語でした。

かわいらしい絵柄からは想像のつかないスーパーハードな展開に震える。子羊が狼とともに冥府魔道を突き進む...これぞまさに「子連れ狼」。やなせたかしという人はやはり只者ではなかったんだな。