ろ

リバティ・バランスを射った男のろのレビュー・感想・評価

5.0

上院議員のランスは妻ハリーとともに、とある町に降り立つ。
ホコリを被った駅馬車、朽ちた家に佇むカクタスローズ。
話を聞きたがる地元の記者たちに、ランスは静かに語り始める。それはまだ鉄道が走っていなかった頃の話・・・

駆け出しの弁護士だったランスはある夜、駅馬車強盗リバティ・バランスに襲われる。
瀕死の彼を救ったのは牧場主トム・ドニファンだった。

面倒ごとには関わりたくないとリバティ・バランスの暴力に目をつむる保安官。
酒瓶片手に民主主義を訴える、町で唯一の新聞記者。
豪快なステーキが売りのレストランで下宿をすることになったランスは、やがて新聞社の隣に学校を開き、読み書きから合衆国の歴史、法律や民衆の権利について教えるようになる。
そしていよいよ選挙の日がやってきて・・・

リバティ・バランスに法の裁きを!と息まくランス。
西部じゃ法より銃が役立つ。自分の身は自分で守れとクールに諭すトム。
東部と西部を象徴する、まるで正反対の二人。
そんな彼らが農場や牧場を守り学校を造るため、そしてリバティ・バランスの暴力から解放されるための新たな風を吹き込んでいく。

黒光りの鞭を打ち鳴らすリバティ・バランス。
しみったれたエプロン姿で小さな銃の撃鉄を起こすランス。
「ついにリバティ・バランスから報道のリバティ(自由)を勝ち取ったぞ!」
法、メディア、銃・・・それぞれの正義が描く未来とは・・・。

トムはランスを’希望の先生’と呼ぶ。
長年夢見た光景をすべてランスに託したトムは、自分の想いに終止符を打とうと母屋に火を放つ。
炎に包まれるまだペンキを塗ったばかりの我が家。
それでもトムの優しさは、サボテンの花となって咲き続ける。


( ..)φ

ずっと観たかった西部劇「リバティ・バランスを射った男」!
「市民ケーン」のような冒頭、そして「浮草」のように余韻を残すラストシーン。
西部劇の世界が似合わなすぎるアメリカの良心ことジェームズ・スチュアートと西部劇の代名詞ジョン・ウェイン。二人の衝突も友情も本当に素晴らしくて、たまらなく胸アツだった。

激若リー・ヴァン・クリーフが「あいつはただからかってただけなんだよ!」と思わず叫んじゃうのもなんだか分かる気がする、バイキンマン感強めな悪役リバティ・バランス。
寂しさと切なさ、情趣たっぷりの西部劇でした。
ろ