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エデンの東のひこくろのレビュー・感想・評価

エデンの東(1954年製作の映画)
4.2
1955年の作品にも関わらず、ものすごく現代的なテーマを内包していて驚いた。
映画の主要なテーマのひとつは「善悪」なのだが、それに対する答えは決して哲学的なものでも大上段に構えたものでもない。
目の前にあるひとつひとつの出来事に対して、それは善なのか悪なのかが問われていく。

田舎の地に足を着けた地味な生活が善で、都会の派手な生活は悪なのか。
戦争に反対することが善で、必要ならば賛成するのは悪なのか。
金儲けに励むことは悪なのか。だとしたら、戦争で稼ごうとすることはもっと悪なのか。

どれもが現代の日本でも通用するような問いだ。
なかでも、金儲けに関する議論ややり取りは、まるで現代社会に対する痛烈な風刺のようにも見えて、とても考えさせられた。

一方でもうひとつのテーマである「子が求める親の愛」も一貫して描かれる。
さまざまな善悪のなかで主人公キャルは揺れ動くが、その根底には「父親に愛されたい」「母親に愛されたい」という一途な思いが常にある。
まだ何者にもなれず、どうしていいのかもわからず、親の愛も感じられないキャル。
彼のなかでは、言葉にできない苛立ちだけが募り、時に衝動的に、時に幼児のように振る舞ってしまう。
その姿が、どこかにあどけなさを残し続けるジェームス・ディーンに最高なくらいに重なる。
見た目はもはや大人も同然なのに、内面に永遠の子供を抱え続ける。
ああ、間違いない。これこそがジェームス・ディーンの大きな魅力のひとつだ、と思わずにはいられない。
彼がいまだに絶大な人気を誇っている理由がよく分かった気がした。
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