新潟の映画野郎らりほう

軽蔑の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

軽蔑(2011年製作の映画)
5.0
【猥雑の中の純愛】


冒頭、高良と鈴木がバーから逃げ、手を繋ぎ夜の街を疾走してゆく。 二人を追うキャメラは激しくブれ 夜の街のネオンは残像の長い帯を引く。 二人の周りの世界が「歪んで」しまったかの様に…。 この時点で私達は それが「二人に安住出来る地が無い事の暗示」である事に気付く。
鈴木に果汁たっぷりのメロンを喰わせる高良。 そのまま涙と唾液、鼻水、そして汗、膣液と精液の抱擁…。 ここでも私達は「あらゆる体液を意識させつつも ある体液が抜けている事」に気付くのだ。


暴力とセックス、無知無秩序・猥雑を下地に、「二人がなぜ惹かれ合うのか」の経緯・背景を敢えて描かぬ事で 逆に惹かれ合う強さ=純愛の強訴求に成功した「椿姫」を思わせる"周囲に認められぬ純愛悲恋"。


自動車走行シーン ~首都高、田舎、車内、車体後方、車窓越し、どこから撮った画もキマッてる。 構図も 動きも。 人物ショット ~ワンショットアップ、ツーショットの寄り、ひき、どれもツボだ。 結婚式を映す画素の荒い動画映像すら流麗。 全ての画のセンスが悔しくなるほどイイ。
"画の力"は ストーリーのシンプルさと相互作用し、作品主題である"純愛"をより際立たせてゆく。

電車越しの別れ、駅を後にする高良にサンシャインハレーション、タクシーでの落涙… ~ここまでワンカット。驚異的だ。 商店街アーケードを行く高良への「出口を求めさ迷う」意味の付与。 時折思い出したかの様に流れるセンスのイイ音楽~テレチクタクチクテレチク…♪ チクショー何なんだこの映画は。


タクシーで抱擁する二人。 あのセックスで抜けていたのが血であった事が示される。
車窓を流れる街灯が 走馬灯の様に映っていた…。




《劇場観賞》