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心中天網島のkoyamaxのレビュー・感想・評価

心中天網島(1969年製作の映画)
4.0
近松門左衛門の人形浄瑠璃 演目「心中天網島」を映画化した作品。

遊女に入れあげた紙屋の男とその遊女との悲恋。
それに加えて紙屋の奥さんの苦悩なんかも描かれる三角関係な話ですが。。

主人公治兵衛が愛してしまった遊女小春と治兵衛の奥さん、おさんの二役を岩下志麻が演じてます。お歯黒の岩下さんも素敵です。

表現の実験要素が多い今作。
劇中内に黒子が存在しているところが大きなところです。
随所で演者の動きを支援するため甲斐甲斐しく動いています。
また、芝居中に時間が静止し、静止したその空間を黒子が動きサポート、準備ができたら再び時間が動き出すような時間操作。
書き割りのような舞台など、その表現自体が見所といえます。

お話は、、理解できるところと理解しがたいところがあり、愛は深いですね笑

主人公は妻子がいるにもかかわらず、遊郭に入り浸りその遊女に入れあげる。奥さんの立場からすると困った男です笑
その行動が明らかになって「自分勝手で堪忍してや~」と泣いて奥さんに詫びるわけですが、まだ心が遊女にある。
懲りない男というか、、言い訳じみた泣き言がエモーショナルすぎて、、笑ってはいけないんでしょうが、、いや笑えますよ。
それに加え「愛する旦那が女と心中してしまうよりはマシ」、と奥さんがなんと家財を投じて遊女を身請けしようとします。
奥さんも奥さんというか、奥さんの行動力すごいというか、だめんずを愛するのも大変だな。。と。このあたりは昔の価値観もありますが、原作の面白さも多分にあるのだとおもいます。


筋と関係ないですが、八間に火を灯すところなんかも描かれており、時代劇であまり観ないようなところなので印象にのこりました。

この話は結局心中するところへ向かって話が進んで行きます。
お話の頭から最後まで黒子が登場し、劇中の展開にも複数人が粛々と結末へと導く作業をしているところが映り込んでいるのですが、観ようによっては黒子は抗えない「運命」そのものという見方もできるかとおもいます。なので、全てに絶望した主人公が大人数の黒子たちに導かれ最後の場所へ歩んで行くところは戦慄を覚えます。


本編の主要人物ではないんですが、
遊郭に金にもの言わせてなんとかしようとする男が登場します。
「この世の中は金や、金やでえ!」
このようなセリフをいう人は現代劇でも他の映画でも登場するとおもいますが、この作品でのそれは絵に描いたようで素敵です。
立ち振る舞い、表情、末路含めザッツ「金にものを言わせる男」グランプリです笑
「金にものを言わせる男」を観たい方は必見です笑
ちなみに小松方正さんが演じています。

余談ですが、人形浄瑠璃の知識がなかったので、人形浄瑠璃の方も視聴しました(ネットは便利ですね。。)こちらは大きな表情変化がない人形を仕草や影の角度で心情を表現する形です。その細やかさは素晴らしいです。映画とは方向性が大分ちがいますが、人形浄瑠璃自体に大きな興味を持てたのは個人的大収穫です。

映画としては、、愛の深さは他人にはわからない領域ですね笑
全体的に笑ってはいけない雰囲気ですが、個人的には笑える要素が結構ありました。
「人生は近くで見ると悲劇だが遠くからみると喜劇」なんですかね。。
全体的なビジュアルは美しかったです。
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