エソラゴト

リトル・ダンサーのエソラゴトのレビュー・感想・評価

リトル・ダンサー(2000年製作の映画)
5.0
1980年代サッチャー政権下のイギリスの炭鉱町でひょんな事からバレエに興味を持ったある少年の成長を描いた作品。

いかにも頑固そうな父親から強制的にやらされているボクシングにはイマイチのめり込めないでいる少年ビリー。そのジムの隣でたまたま臨時に行われたバレエ教室に彼の目は釘付け。そしていつしか人を殴ることよりも自ら踊ることに喜びを感じ始める。

当時の政治状況やバレエに対する偏見からか炭坑夫である父親そして兄からは猛反対を受けふさぎ込むビリー少年…。その後ビリーの諦めきれないダンスに対する情熱やひたむきさを感じ取った父は息子の為にプライドをかなぐり捨ててある行動に出る事にー。


劇中、度々出てくるビリーのダンスは正に喜怒哀楽の全てが詰まった本能の舞。喜びや怒り、悲しみという感情に身を委ね本能の赴くままにステップを踏み踊り狂う姿は、ロイヤルバレエ学校の面接官からの「踊っている時の気分は?」という問いに対する答えにハッキリと身体表現として表されていた。

音楽の選曲もまた抜群で、T-レックス、ザ・クラッシュ、ザ・ジャム等イギリスを代表するロックバンドの名曲が物語に効果的に流れる。特に個人的に大好きなザ・ジャムの「悪意という名の街」が、ビリーが溜まりに溜まった感情を一気に爆発させるダンスシーンで使われていてしかも物凄くマッチしていたことにはとても胸が躍り自分もいつの間にか体を大きく揺すっていたのはココだけの話。

親子愛、兄弟愛は大変感動的に描かれていたものの何故か先生との師弟愛に関してはドライな関係性で終えるところが疑問に残る部分…。幼くして亡くした母への幻影をどこか自分に重ねていたことに彼女自身が気付き、巣立っていくビリーの事を考え敢えて冷たく対応したのか…うーん、自分にはその辺りが上手く読み取れなかった。