せーじ

トップガンのせーじのレビュー・感想・評価

トップガン(1986年製作の映画)
4.0
330本目。
書きたいと思った残り二作は、このシリーズでした。
実は二作ともアマゾンプライムで見放題になるまで待っていようかなと思っていたのですが、久しぶりにハマってしまった朝ドラ『舞いあがれ!』で「航空学校編で吉川晃司さんが自衛隊出身の鬼教官として登場する」という話を聞いて「じゃあ観ておかなくちゃ!」と決意。(どんな理由だ)
吉川晃司さんが登場する前の週までになんとか二作鑑賞をすることが出来ました。




…なるほど。
これは確かにカッコいい作品ですよね。1986年制作の映画とは思えない、現代でも色褪せない魅力が確かに在る作品だと思いました。ただ…どうなのかなぁと思ったりもする部分も色々とあったのですよね。例によってここからは、そのあたりを具体的に言語化していきたいなと思います。

■モータースポーツライクな撮影手法のカッコよさに震える
この作品の一番の美点はこれに尽きるでしょう。パラマウント映画のロゴが出てから、Danger zoneがかかってF-14が離陸するまでの約4分間に渡るオープニングシーケンスの完璧なカッコよさ、ですよね。80年代の映画でこれが撮れるって本当に本当に凄いと思います。今観ても色褪せないカッコよさがそこにはあると思いました。
この一連のシーケンスを観ていて自分は「何かに似ているなぁ…」と前々から思っていたのですけど、愛聴しているラジオ番組の映画批評コーナー「ムービーウォッチメン」でライムスター宇多丸氏がこのことを指摘されていてようやくなんなのかが理解出来ました。これは「モータースポーツの撮り方」なのですよね。スタッフの動きを追うカメラワークといい、マシンの撮り方といい、F1とかがピットから発進するシーンによく似ているのです。なので、戦闘機のドッグファイトは「試合」であると捉えて観ると、わかり易いのではないかなと思います。つまり極端なことを言ってしまうと、この作品はスポ根モノに近い構造を持つ作品なのですよね。扱っているジャンルが違うだけで。
もちろん戦闘機だけではなく、それを扱う「中の人」も、ムチャクチャカッコよく描かれています。トム・クルーズのようなイケメン君が、ノーヘルでバイクを駆って惚れた女性のもとに逢いに行く…なんて、カッコよくならない訳がないですよね。脇を固める友人である相棒やその家族、そして圧倒的な力を持つライバルなど、登場人物の配置も完璧すぎます。そりゃこんな作品に主演で出ていたら出世作になるだろうし、リアルタイムでこの作品を観ていたら、トムのカッコよさにどハマりしていただろうなとも思うのです。

ただですね・・・

■能天気にも見えてしまう「カッコよさへの奉仕」
今にして改めて鑑賞すると、諸々の細かい部分が「カッコよさ」に奉仕するがあまり、能天気な雑さで処理されている様にも見えてしまって、なんだかなぁという気持ちが拭えない作品だなと自分には感じられてしまいました。仕方がない部分もあるとは思います。この作品が出来た時点ではまだソ連が存在し、冷戦が続いていた訳ですから。にもかかわらず、そういった政治的緊張の最前線の部分を題材としてリアルに描く以上、「敵はどうするのか」と言ったらオトナの事情でこうするしかないというのはよくわかります。
ただ…なんて言うのですかね。その、そうだとしてもあまりに描き方が単純すぎるのではないかなと思うんです、この映画で起きることが。「俺たちは世界の警察なんだZE☆こんなクールでカッコいい、そして健気なトップガンたちがバリバリアメリカを守っちゃうんだぜ?ワイルドだろう??」とでも言わんばかりな展開なのですよね。お前らベトナム戦争で何を学んだんですか…となってしまうのは自分だけでしょうか。そんなだから、この後の時代でも性懲りもなく世界中に火種を撒いちゃうんじゃないかな…と思ったのは自分だけでしょうか。
いやいや、野暮な問いかけだというのは十二分に理解しているつもりです。フィクションとして楽しめばいいじゃないか、という考えもわかるのです。ですが…ということですね。なんだろう、「兵器」を扱うことについての意味だったり、生命のやり取りをしているのだという覚悟や畏怖のようなものが、ゼロではないのですけど思ったほど強くは感じられなかったのが、個人的には残念でしたね。葛藤があるのは良いと思いますが、プログラムされているような予定調和感が強くて、もっとヘビーにトムを追い詰めても良かったのではないかなと思ってしまいました。そこは残念ながらプロットまで「スポーツ」みたいになってしまったのだということなのかもしれません。

※※

ということで、カッコいい映画だというのは分かりますし、実際映像としては物凄くカッコいいと思いますが、作品全体としてはあまりカッコいいとは思えませんでした。これは仕方が無いですね。時代の変化だったり価値観の変化だったりがこの映画が作られてから今日までの間に様々な形で為された証拠でしょうから。なので、自分みたいにクドクドと考えずに、純粋に「トム・クルーズ映画」として楽しむのが吉だと思います。

次回は新作をレビューしたいと思います。お楽しみに。
せーじ

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