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新幹線大爆破のろのレビュー・感想・評価

新幹線大爆破(1975年製作の映画)
5.0

東京発ひかり109号に爆弾が仕掛けられた。
タイムリミットは博多に着くまでの10時間。
警察、国鉄、そして犯人グループそれぞれの運命がいま動き出す・・・

「ひかり109号に爆弾を仕掛けた・・・?」
犯人からの電話を受け、カメラは乗客1500人を乗せた新幹線へ。
どーんと現れる赤いタイトル、ここで初めて鳴り響く音楽が信じられないぐらいかっこいい。

80キロを下回ると爆発するという爆弾を抱えながら走る。
妊婦の難産に護送中の犯人の脱走、急遽上り線へ突っ込まざるをえなくなる非常事態・・・乗客の安全のために備え付けられた装置は仇となる。車内は次第に冷静さを欠いていく。

手に入ると思った新幹線の図面は不慮の火災で消失。
夢を語り合った二人はいまや亡き人に。
誰も傷つかない、傷つけないはずだった完全犯罪はドミノのように倒れていく。

「これ以上ジタバタしても見苦しいだけかもしれない」と計画遂行を思い悩む健さん。
二人分の偽造パスポートを焚き上げ、二人分の大金をボール紙に包む。
「あなたが私と同じだけ 傷つかないのがつらかった」
テレビから流れる歌謡曲が虚しさを一層掻き立てる。

人命救助か犯人逮捕か、それぞれの正義が火花を散らす。
こんなはずじゃなかった、あのときああすればよかった。
スピードメーターの針は80キロと120キロの間で揺れる。
これをしてさえいれば安全だと言い切れることなんて一つもない。
なにが正解なのか、誰にも分からない「人生」。
そんな不確かなものに、私たちはひたすら賭け続けているのかもしれない。


( ..)φ

死ぬほどかっこいい映画だった。
午前十時の映画祭で、大きなスクリーンで観なかったことを心底後悔した。それぐらいかっこいい映画だった。

運命に翻弄される人たちの話。
事件が解決してもその人の心の中ではまだ終わっていなかったり、命を絶つことで決着をつけたり目的を達成したり。
警察や国鉄といった組織から徐々に個人にクローズアップしていく、その奥行に痺れた。

札幌の貨物列車からはじまり、東京駅のホーム、長瀞ライン下り、羽田国際空港。
名古屋、京都、新大阪、新山口・・・映画を観ながら東京ー福岡間を旅した気分だった。
ろ