ーcoyolyー

ブラッド・ダイヤモンドのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

ブラッド・ダイヤモンド(2006年製作の映画)
4.0
これ確か数年来アイドルからの脱皮に苦しんでいたレオ様がついにアイドル脱却晴れて演技派扱い(彼はアイドル扱いされている時もそれ以前もずっと演技派であったのにハリウッド重鎮という名の男どもからやっかみからなのかずっとそう扱われてなかった)仲間入りを果たした記念碑的な作品だったよなと思いながら観始めた。

非常にバランスの良く取れた作品でしたね。

この映画を作る動機としてシエラレオネの凄惨な状況を伝えたいというのがあって、そこにレオ様キャスティングで予算ドーン!でもこれだけ予算乗せて小難しいしかめっ面だけの映画だとまずいこれハリウッド映画だし、で結果ハリウッドの重鎮の男どもが好みそうな温度の「キリング・フィールド」+パニックムービーという辺りに落とし込んだ、と推察しました。話の展開はパニックムービーテンプレなんだけどその描写がしっかりと「キリング・フィールド」なのでこれ混ぜ合わせてこの湯加減に落とし込むの大変だったろうな…

西洋の白人の意識高い系の人がウクライナを見て「白人がこんなことに…」とそうと意識せずに思いっきり差別意識丸出しで絶句してる時、その人たちの脳裏によぎるのはこの映画だったりするんでしょうね。意識高い系の人がめちゃくちゃ好きそう。自分の差別意識の上にあぐらかいているのに気づかずしたり顔して神妙に語ってる姿目に浮かぶ。ウクライナ情勢に対する反応って白人はいつも神のように救済に入る役柄しか想定してなかったのに白人の白人による白人のための戦争(被害者も白人)という現実が突如目の前に現れて受け止めきれてないんだよねきっと。

あと多分「ゴールデンカムイ」もこの映画に強く影響受けてると思う。

少年兵が政府軍の中にもいたとかそういうのは制作サイドだって入れたかっただろうけどそれ入れたらハリウッド映画になんねえんだよ、ここが限界!という心の叫びは随所に感じられたので細けえことはいいんだよ!と見過ごしてあげたい。やりたいことはもっと沢山あっただろうけどそれ入れちゃうと一応体面だけは保っていた「娯楽大作」じゃなくなるんだよね。それはもう他の国の他のクルーに任せようと割り切るしかねえよな、って思うわ。

こんなに血を流して採掘され密輸され売られたダイヤモンドは田中みな実的な人に贈られていくんだろうけど、その田中みな実は田中みな実で別の血を流してこれを手に入れる。マリリン・モンローの「ダイアモンドは女の親友」だって全然幸せな曲じゃない。消費者側も全然幸せじゃない。採掘から消費まで関わった全員が幸せじゃない。こんなものいらない。私ダイヤなんかいらない。こんな石っころに私の人生や全てを縛られたくない。誰も傷つけたくない。

少年兵は辛かった。子供の頃見ていた少年兵の姿に対してこんなことは思わなかったんだけど大人になった今見るのは辛い。私きっと少年兵のような子供だったからそれに対して判断を拒否してたんじゃないかな。今、もう、私は少年兵ではないからその子供たちがさせられていることを見ると胸が痛む。これは大人のエゴの膨らんだ成れの果てだから大人として申し訳なくなる。少年兵の子たちのような子供時代を送って治療を受けて四半世紀経つけどなんだかまだまだ私はボロボロで最近やっと麻痺してた部分の感覚が戻ってきて地雷原のような場所に行くたびにパニック発作を起こしていて、でもそれが回復の過程というような現状。今まで凍結され麻痺していた部分の感覚が戻るってそういうこと。その場に引き戻されて痛みが襲ってくる、これが回復の第一歩。だから他人事じゃなくて辛かった。ああいう子を生み出すのは簡単なのにそこから回復するには長い長い時間と手間暇がかかる。回復できればまだ儲け物でできない人もいる。辛い。

ディカプリオはつくづく上手いよね。一筋縄ではいかない人物の一筋縄でいかなさをそのまま演じて、そしてハリウッドの人これくらいが好きだよね、というジャストの匙加減でヒューマニズムを入れてくる。「キリング・フィールド」なので白人は狂言回しと心得てそのポジションをうまく演じ切る。この人自分が中心じゃないと気に食わないスターではなくて平気で脇に回れるしむしろ脇の方が楽しそうだから世界中のアイドル・セックスシンボルとして中心に据えられていた時期は本当キツかったと思う。ヒュー・グラントなりトム・クルーズなりになれる道もあっただろうにそこは選ばなかった。この映画なんて完全に「俺の知名度使ってくれ」以外のものないもんね、俺を見ろ!俺だけを見ろ!の人じゃない。

最近「日出処の天子」読んで、やっとずっとレオナルド・ディカプリオに感じていた気配の正体がわかった。
この人あまりにも天才過ぎて善良で平凡な小市民の親とは距離ができてしまって分かり合えなくて、という類の孤独を抱えてる人なんだ。親がステージパパママならいっそ諦めがつくものをそこら辺の良識はあって弁えている普通のいい人。だから辛い。誰も悪くないんだけどそこにある才能の違いが明らかで大き過ぎて上手く関われない。そういう寂しさの人か。

天才の孤独は同じレベルの天才としか分かち合えないものだと思うからソン・ガンホ兄と仲良くすればいいと思う。きっとガンホ兄なら理解してくれると思う。
ーcoyolyー

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