タキ

未来世紀ブラジルのタキのネタバレレビュー・内容・結末

未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

南米のブラジルとは全く関係のない情報統制がなされたテロが頻発するダクトだらけのデストピア、Brazil。「未来世紀」なる邦題がついているが20世紀のどこかの国の話という注釈付き。未来じゃないしブラジルでもない。初っ端からナゾすぎる。
設定はかなり奇妙だが、ストーリーは意外とシンプルで見やすい。主人公のサムは資産家で整形が趣味の母親にほとほと手を焼きながら出世欲もなく淡々と情報記録局に勤める毎日。そんな中、記録間違いでテロリスト「タトル」と間違えて一般人の「バトル」が誤認逮捕される。それを見ていたトラック運転手のジルは記録局に抗議に訪れるが追い返される。サムは誤認逮捕の揉み消しの後処理を任せられ、払い戻しの小切手を渡すためにバトルの未亡人の元を訪ねたところ、自分が見ていた夢にでてくる囚われの美女がバトル家の上階に住むジルにそっくりなことに気がつく。彼女の情報を得るためにコネ出世を受け入れ、苦心して彼女に愛の告白をし行動を共にするが、機密情報の漏洩、無断欠勤、公用車を返却しないなど次第に危険人物として情報局から追われる身となる、というのが大筋。
この映画、配給会社が作ったハッピーエンドパターンと監督が作ったバッドエンドパターンがあるそうで、私が見たのはちょっと長めのバッドエンドパターン。たぶんタトルがサムを助けにきたところからが狂ってしまったサムの夢なのだ。この異様な世界観には断然こっちの方が似合う。これをハッピーエンドにするなんて配給会社の偉い人はびっくりするほどセンスがない。すでにスターだったロバートデニーロをぜいたく遣いしているのも逆にカッコイイ。このおじさんデニーロに似てるなぁと思いながら見てたら本人でビックリした。
しかし西洋の騎士姿のサムを襲う甲冑のサムライや官僚的で残酷な同僚のジャックがつけていた中国人風のお面などに感じるオリエンタリズムにはひっかかる。
色々調べてたら劇中で流れている曲はブラジルの水彩画」というタイトルらしい。なるほどそれでブラジル。

夢は、悪夢のような現実から逃れるために…。『未来世紀ブラジル』
https://www.thecinema.jp/article/981
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