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スピード・レーサーの東京キネマのレビュー・感想・評価

スピード・レーサー(2008年製作の映画)
3.7
映画としては大失敗だと思うけど、個人的には好きだなあ、この映画。

先ず、ウォシャウスキー兄弟が本当に日本のアニメのことが好きだっていうのが伝わってくる。日本アニメを実写にするっていうとてつもなく難しいハードルに挑戦し、ちゃんと一つのスタイルに仕上げているのが何と言っても素晴らしい。

カメラ目線のアップやら、カッティングから始まって、アクション・シーンやそのリアクション、或はレース・シーンのバトルにしても日本のアニメのスタイルを踏襲しながら、実写にしても違和感ないようにブラッシュ・アップしている。カラーリングにしたってちょっと際どいセンスだと思うけど、日本アニメのエッセンスをウォシャウスキー流にアレンジしていて派手で格好いい。

こういうのって相当難しいと思うんだけど、随分頑張ったんだねえ、と肩でも揉んであげたい気分。この手の映画をけなすのは簡単だけど、今時、新しいスタイルを作るのは至難の技だったりする訳で、結果的に失敗したからって責める理由なんかないだろうし、こういった日本のサブカルを世界に広めてくれている日本大好きのウォシャウスキーの冒険だったら暖かく見守って上げましょうよ、と日本人の私としては痛切に思ったりする訳です。

大体、日本のカルチャーって全てがフラットで、これが日本人自身が感じる最大の欠点なのですね。片やフェルメールでこっちは歌麿。パースペクティブで光と陰影のリアリティーと、パンフォーカスで平面的なデフォルメ。もう水と油ぐらい違っていて、これが映像になると、やれフラットだの陰影がないだのと言われ、こういった映像になっちゃうのは日本人のDNAなんだろうと諦めてしまったりする訳だけど、そんなことないよ、そういうスタイルだって案外素敵だよ、って言われているような気分になる。そういうのを感じるから、とても嬉しくなってしまうのです。
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