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スパイダーマン3のshxtpieのレビュー・感想・評価

スパイダーマン3(2007年製作の映画)
2.0
オリジンもなにも描かなかった MCU のスパイダーマンこそがすばらしい、トム・ホランドが演じるピーター・パーカーこそが最高なんだ、と思うぼくにとって、サム・ライミのスパイダーマン ・トリロジーを見かえすことは、なかなかきついことだった。なにせ、やっぱり世界の描きかた、物語とその語りかたが浅薄なのだ。たとえば、北村紗衣は先日、 Twitter で『スパイダーマン:ホームカミング』のヴァルチャーはトランプ支持者だと思う、といっていた。ぼくもそう思う。現実の社会の複雑さ、その困難が、 MCU のスパイダーマン には投影されているのだ。それに、チャーミングなユーモアもたっぷりある。

いっぽうサム・ライミのトリロジーは、たしかに『スパイダーマン』というコミックを原作に映画を撮る、という困難をなしとげているものの、どうにも閉じた、おとぎばなしの世界になってしまっている。たとえば、トリロジーにおいて、 MJ は何度ヴィランにさらわれただろうか。ピーター・パーカー/スパイダーマンやそのヴィランたちに翻弄される彼女は、いつでもただのダムゼル・イン・ディストレスである(最後には、ピーターという子どもを無条件に受け入れる母になる)。だから、サム・ライミのスパイダーマン ・トリロジーを見ていると、アメリカン・ニュー・シネマよりまえのアメリカ映画を見ているような気分になる(それは、コミックのゴールデン・エイジやシルバーエイジに重なる)。

とはいえ、この『スパイダーマン 3 』には、トーマス・ヘイデン・チャーチが演じるサンドマンという厚みのあるヴィランが登場する。彼は、苦悩や痛みを抱えたヴィランだ。それだけに、彼をいかせていないのはつらい。ベンおじさんを殺してしまった理由も、あまりにもしょぼい。そして、わるい意味で語り草になってしまっているシムビオート/ヴェノムにのっとられたピーター・パーカーのまぬけさは、見ていてかなりきつい。あれがすべてを台無しにしてしまった。なんだか、映像やカメラワークがずいぶんと現代的になってきただけに、余計にしんどいものがある。
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