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アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)のギルドのレビュー・感想・評価

4.4
【創造する苦悩に潜む罪の存在】
■あらすじ
アンドレイ・タルコフスキーとアンドレイ・コンチャロフスキーという、旧ソ連の枠を脱して活躍することになる二大俊英が協力して脚本を執筆し、中世ロシア史上最高のイコン画家アンドレイ・ルブリョフを主人公に、当時の社会と民衆の関わりを巨視的に捉えた歴史大作。

■みどころ
イコン画家アンドレイ・ルブリョフを当時の内乱きっかけの動乱期を交えて巨視的に描いた伝記映画。

章立てをして、アンドレイ・ルブリョフの作品に潜む歴史・感情が生まれたルーツを描く。
惑星ソラリスや鏡よりも前の作品なのか、僕の村は戦場だった・ローラーとバイオリンのようなテンポの速い作品なのが意外でした。
黒澤映画の「七人の侍」のようなスペクタクルさすらもある映画で、結構新鮮な気持ちで観れたのは意外でした。

この映画ではルブリョフが生きていた当時の歴史を深堀していく。信仰心が薄くてそれ故に簡単に殺し合ったり、疫病も流行ったり、異教徒もどこからか湧いて争いが起きる世紀末な展開が起きていく。そんな中で罪を深堀していてそこが興味深かったです。
ルブリョフの営みの中で行き違いや悲惨な出来事を目の当たりにし、時には罪悪感をも生み出してしまう。全体を通じて罪をキリスト教の罪が人を前に進むと同時に罪が人を縛ってしまう二面性をルブリョフや関係者を通じて描くのが興味深かったです。

罪による感情変化や昇華するシーンが多いが、そういったテーマ故にタルコフスキー作品でお馴染みの「水」「炎」の神秘性が合致していてそこが良かったです。
特にそれを体現した若者が多くの人々を束ねて鐘を作って慣らすシーンはルブリョフが罪を通じて行き着いた創造する事の苦悩、苦悩の末の達成感をそのまま重ね合わせた大団円を現出していて感動しました。

そして、この映画では群衆の存在が重要になってくる。
群衆が関わるシーンにおいて破壊と再生、罪と懺悔…といった対極の存在が色濃く描かれている。
「バビ・ヤール」「破壊の自然史」のセルゲイ・ロズニツァ監督のベスト映画1位に本作が選ばれているが、本作の群衆を通じた罪と歴史の影響というのが作家性のルーツなのかなと思うくらいに群衆の描き方がキーポイントになってた。

タルコフスキーで3時間は長いのと作家性ゆえに敬遠してたけど観てみると他の監督の源流を知れたり色んな発見が出来たし、何よりもタルコフスキー作品をコンプリートできた達成感もあって良かったです!
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