馮美梅

男たちの大和/YAMATOの馮美梅のレビュー・感想・評価

男たちの大和/YAMATO(2005年製作の映画)
4.5
映画も関連本も読みました(DVDも持っています)
戦艦大和と、そこに生きた人々を描いた作品。
特年兵(十四歳の少年から志願者を採用した海軍特別少年兵)神尾を通して、当時と現在を作品で繋いでいる。

愛する人を守るために闘いに向ったけれど、仲間を失い、大切な人たちも空襲や原爆で失いながらも生きた。行きたくても生きることがかなわなかった仲間のために、生きていることを恥じながらも生きた。

ある時、主演していた松山ケンイチさんがローカルテレビで他の映画のプロモーションでVTR出演するという日、そのインタビューの前に曜日コーナーがあって、偶然お話を伺った男性は、まさに当時大和に乗船し生き残った方でした。その方は戦争に行った方がもらえる恩給を辞退しているんだと。どうしてかとコーナー担当のアナウンサーが尋ねたら「多くの仲間が死んでいったのに、生きてる自分だけがそんなものを貰うことなんてわしにはできん」と。その人も同じように壮絶な中戦ったのに、今も死んだ仲間の事を思いながら生きているんだなとなんか勝手に偶然にさらに胸熱くなりました。

血気盛んで思春期真っただ中の少年たち。映画では描かれないけれど、そりゃ、女性に対しての性的な好奇心もあったり、親に甘えてみたかったり、色々な思いはあるわけです。人間だからそんなストイックに生きていられるわけなんてないです。

自分の居場所を知られてはいけないので、手紙に居所や部署がわかるようなことも書けず(当然検閲もあります)家族も本当に不安だったことでしょう。それぞれの家族との関係も胸に迫るものがありました。

最後の戦い、狂ったように砲弾を打つ神尾に内田と森脇は「生きろ」と言い甲板から海に落とすシーン。その後、沈んでいく西を助けようと必死で重油まみれの海で探す神尾。そして自らも遠のく意識の中で内田に助けられ、生き延びた神尾。しかしこの時内田も生き延びていたのになんで?気が付かない?と思ったら、実は助けられた船が違っていたためお互いの生存を知ることが出来なかったようです。(これは書籍の方に書かれてて、なるほどと思いました)

死んだ西の実家に向かい、彼の母に「なんであんたは生きてる」と言われ謝るしかない神尾に。本当はそんな事西の母も言いたくなんてないけれど、運命の理不尽をどこにぶつけたらいいのかわからず神尾に向かってしまった。でも翌日「あんたは生きて」と言われた神尾。彼にとってはどちらの言葉も彼の救いにはならなかったんじゃないかと思う。

そしてもう1人、彼のおなさなじみの妙子との再会。再開した妙子は軍需工場での奉仕のために広島市内に通っていたために被爆。見るも無残な広島の姿はきっと神尾にとって、大和のあの戦いの悲惨さとかなさったことだろう。子供だった2人が悲惨なことを体験して大人になっていく姿に涙しました。

内田もいろんな人たちの思いを背負いながらその後の人生を生きてきたんだと、養女の真貴子を通して知らされる。内田さんは神尾が生きていたことを知っていたんだろうか…

戦争の話、体験は1人1人本当にいろんな物語があり、この作品もその1つ。
同じ民族同士でもそれは様々だし、他の民族同士ても同じ。大事なことはそういうことをせずに、それぞれの国が戦争をせずに生きて行けるのか、そういうことがあった事実に蓋をするのではなく、後世に伝えていくことも世界平和のためなんじゃないかなと思います。

他にこの作品に関して感じたことをこちらに書いています
http://kandj.blog23.fc2.com/blog-entry-75.html#more
馮美梅

馮美梅