馮美梅

ラーゲリより愛を込めての馮美梅のレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.2
終戦直後の満州にソ連が進行、そこで捕虜として捕まった日本軍捕虜たちの過酷な実話。このソ連へ連行されたのって単につかまって連れて枯れただけではないんですよね。色んな方法でソ連へ連れていかれた人たちがいました。

今回の主人公である山本旗男さんも連れていかれた理由はロシア語が堪能でロシア文学などの精通していたということでスパイ容疑ということみたいです。

どこへ連れていかれているかもわからないくらい列車の中で英語の歌を口ずさむ山本さん。着いた収容所ではまるで人間扱いとは程遠いほどの過酷な労働。食事は1日1回少しのパンとシャバシャバなスープ。

特に冬になるとあまりの寒さに顔には凍傷、栄養失調も含めバタバタと倒れて死ぬ人、寝ている間に凍死してしまう人も続出。

絶望しかない中で山本さんは周囲の人たちに常に前向きにそして帰国という希望を捨てずに生きていこうと訴え続ける。それは彼自身も妻との約束生きて再会することを果たすため。

そしていよいよ帰国できることになって喜んで列車に乗り込むが再び途中降ろされ違う収容所へ、それも25年の刑とか言われたらマジたまったものではない。

そこでも以前とはまた違ったいろんなことがありました。
いろんな人との出会いもありました。犬との出会いもありました。
少し楽しみなども出来たり、家族との手紙のやり取りもできるようになった矢先、再び山本さんに試練が。体調を崩し倒れてしまう。結果は癌ですでに手遅れの状態。

同じ部屋の仲間たちの助けもあり、家族に遺書を残すことに。しかしこのまま持っていても取り上げらてしまい可能性もある、折角の遺書が家族のもとへ届かなくなってしまう。そこで4人の仲間それぞれ分けることに。そしてそれを暗記することに。紙に書いたものがもし取り上げられたとしても自分が生きている限りは遺書は誰にも奪われることはないということで。

そしてついにみんなが帰国できることに。

可愛がっていた犬が離れていく船を追いかけるシーン。
マジかよ!?とおもってしまうけれど、実はこれマジな話で、実際その時の写真などが残っているんですよ。これって日本の船だったからできたことじゃなかいなぁと思ったりした。

4人がそれぞれ山本家に遺書を届けに来るシーンはそれぞれ割り当てられた遺書がふむふむって感じででした。これは本当に山本さんの人徳だだったのではないでしょうか?きっと無念で死んでいった人たちも家族に何か残したかっただろうけど、それも叶わなかった。

山本さんの周りには彼の思いを家族に伝えてあげようという人たちがいて、彼が果たせなかった約束や家族に対する思いを肉体は死んでしまっても彼の思い、生きていた時の彼のなしたことを家族に伝えてくれたということで家族もきっと納得してそして約束を果たしてくれたと感じたのではないだろうか?

山本旗男さんを演じた二宮和也さんの演技は本当に素晴らしかった。
後半、病に倒れて以降の声の演技、一見達観したかのように思えても本当はどうしようもない無念さを感じずにはいられない思いが体全体で感じられました。

残念だったのは中島健人さん、朗らかな演技は良かったんだけど、唯一、川のシーン。あの筋肉はもうちょっとどうかした方がよかった。若いとはいえ、すでに何年も収容所にいるのにあの筋肉はないよ。栄養失調に感じられない。脱がさなくてよかったのかもしれないなぁ。彼自身もきっと役作りで筋肉落としたのかもしれないけれど、やはり足りなかったなぁ。足が不自由で漁師をしていたとしてもちょっとそこだけ違和感を感じました。(演技自体は新鮮でよかったです)

今まさにロシアはウクライナに侵攻していて、不条理なことを行っています。これからウクライナも寒さ厳しい季節。この作品を見てウクライナの人たちがひもじい思いや寒い思いが少しでも緩和されることがあればいいなと思ったりしました。

結構後半、劇場内で泣いている人は多かったように思います。
馮美梅

馮美梅