平野レミゼラブル

シティーハンターの平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

シティーハンター(1993年製作の映画)
1.6

このレビューはネタバレを含みます

冒頭から「俺はシティーハンターこと冴羽獠!」と自分のことを冴羽獠と思い込んでいる一般ジャッキーがにこやかに語りかけてくる時点で何かを間違えている元祖実写版『シティーハンター』。
その後も、よりにもよって槇村が死ぬ名シーンをコント仕立てで茶化しながら消化するので本当に冒頭の時点で間違っている。
そもそも、本作が作られた理由というのが「ジャッキーさんって冴羽獠にそっくりですよね!」というファンの一言がきっかけだと言うので何もかもが間違っている。
 
でも、一応北条司先生の書下ろしイラストも挿入されて始まるのでれっきとした公式実写映画なのである。クソァ!!
 
もう根本から間違っていたので、こっから先は基本的に本作の間違っている部分を列挙するだけのレビューになります。何もかもが正解を叩き出していた仏版を観たあとに鑑賞したのですが、こちらは対照的に何もかも間違っていましたからね。いや、本当に何をどうやったらこんなに間違えられるのかってくらいに間違っているんで逆に凄いですよ……
 
『シティーハンター』と言えど、ジャッキー映画ということでアクションはジャッキーが体を張って頑張ってくれます。まず最初にジャッキーが魅せてくれるのは、その華麗なガンアクション……ではなくスケボーアクション。スケボー!?
家出少女のゴクミにそそのかされたスケボー集団とジャッキーとのスケボーによる壮絶チェイスが始まります。
……いきなり、シティーハンターらしさも、ジャッキーらしさも消失してるんですが。
しかもスケボー集団、そこら辺にいたただのスケボーやってる若者のはずなのに、ビルの2階から窓をぶち割って逃げるジャッキーに対して、同様の飛び降りを敢行してほとんど離脱者を出さずに追いすがる作中屈指の強者なので意味がわからないです。
 
一応、銃が凄腕という設定は生きてましてその超絶技巧は披露されるんですけど、ジャッキーは調子乗って弾をすぐに使い果たすので、結局カンフーがメインとなります。シティーハンターをやりたくないんだなって言うのが露骨に伝わってきます……
カンフーに関してもジャッキー映画のいつものおふざけも入るコミカルなものなので、シティーハンターらしさはここでも皆無です。ブルース・リーには作中でも直接リスペクトを捧げているのですが…あの…もうちょっと他にリスペクトを捧げる先が…あったのではないのかな????
 
キャラクターもあらゆる方面で間違っていて、冴羽獠がどう足掻いてもジャッキーなのは100万歩譲ってスルーするとしても、性欲より食欲の方が勝っていた時点で「こんなのリョウちゃんじゃないやい!」ってなります。仏版はリョウちゃんのコンプラ違反が抑制されたのを媚薬のせいで性欲が女性じゃなくておっさんに向けられるようになってしまったという理由付けが原作者も絶賛するほどに素晴らしかったのですが、ジャッキーはというと朝から何も食べていないだけで目の前のもっこりちゃんスルーしますからね。こんなのリョウちゃんじゃないやい!
というか腹ペコネタをやたら引っ張るのもよくわからないですし、「刺身よりワンタンメンが好き」と香港っぽさをアピールしてくるのも完全に無駄な描写です。
 
ジャッキー以上に受け入れられないのは香で、単純に性格最悪のクソ女と化しているのが本当に良くない。仏版で強火のリョウ香の関係性を提示されただけに、香港版香の感情移入も出来なければ、リョウちゃんのバディにもさせたくないクソ女っぷりはショックです。
 
ゲストのゴクミは、ゴクミ自らも本格アクションをしているというのがウリですが、アクションしてる時にやたら遠景になっていたような……ゲフンゲフン……これ以上いけない。単なる依頼人の娘以上でも以下でもない存在なので、ゴクミに関しては特に語ることもありません。
 
実写化のセンスも漫画原作であることを限りなく曲解したかのようなおふざけっぷりで、シティーハンターの世界観に全くそぐわない『トランプとか武器にして戦う男』が出てきたり、高いところから人が落ちて人型の穴が空く(絵に描いたような人型…というか本当に絵に描いたのがバレバレな質感)のには唖然としましたね。
100tハンマーもしっかり出しますが、こういう全体的に低品質な中でお出しされると、原作再現じゃなくて滑り芸になってしまうんですね……
 
あと、仏版では最後はちゃんと止めて引いて『Get Wild』流してくれるリスペクト精神が嬉しかったですが、安心してください。こちらもちゃんと日本のポップカルチャーに関連した音楽を流してくれますよ!
わあ!やっぱり TM Network!?
いいえ、とんねるずの『ガラガラヘビがやってくる』の広東語Verです。
なしてじゃ!!
しかもFull!
マジでなしてじゃ!!!!
 
上記の間違い要素の時点でもう赤点は確実なんですが、本作最大の間違いを前にしては全てささいな問題として流せます。
その本作最大の問題は敵の一人であるゲイリー・ダニエルズ(実写北斗のケンシロウ)とのゲーセンでの対決時、ゲイリーの猛攻を受けてジャッキーが『ストリートファイターⅡ』の筐体に突っ込み感電してしまったところから始まるのですが……
 
 
突如ストⅡのケンと化したゲイリーが竜巻旋風脚をしてきます。
 
 
なして…?
 
 
負けじとジャッキーはエドモンド本田になって対抗します。
 
 
 
 
 
なして………!!!!!??????????
 
ちゃんと版元に許可を取ってBGMや「ウーワウーワゥーヮ…」や「ハドウケン!」といったCVまでストⅡのものを使っている気合の入れようが凄いのですが、気合を入れる部分を絶対に間違っている。
他にもモブがガイルやダルシムに扮したり、ジャッキーは最終的に春麗になって戦いに勝つのですが、竜巻旋風脚あたりで脳がキャパシティーオーバーを起こしたので再生を止めて寝ましたからね。そして目をさましてからしばらくして、目の前の実写ストⅡが現実のものと知って頭を抱えました。
ストⅡの動作の再現は何故かかなりの高クオリティなのですが、もはやシティーハンターであることを完全に放棄しています……
もうどこからどう突っ込めばいいのかすらわからないのですが、春麗ジャッキーはやたら可愛く、本作最大の見どころと言えてしまうのが本当に悔しい……!ヤッター(電子音)じゃないよ!!ああもう!飛び跳ねる春麗ジャッキー可愛いなあ!!
 
一応、シティーハンターとジャッキーっぽさが融合した格好良いシーンというのも存在していて、香を抱きかかえて香の脚についた銃を使い2人で踊るように敵を狙撃していくところなんかは、かなり良いアイデアでしたね。ここはリョウちゃんと香が共闘していた仏版でもやってほしかったアクションです。まあ、ラスボス戦は例によって銃がナーフされ、トンファーや三棍棒を使ったカンフーに終始しているのでシティーハンターらしさは雲散霧消しますが……
 
ラストにちょっとジャッキーが気障なことを言ったりして、リョウちゃんっぽさを出すか出さないかのところで、性格が最悪なままの香に100tハンマーで吹っ飛ばされ、美女がたくさんいるプールに落ちて終劇というよくわからなすぎるラストからいつものジャッキー映画のNG集が流れるのですが、いや…これマジでなんなんでしょう……
完璧すぎる仏版を観た後…ってのを差し置いたとしても普通に出来が異次元で『シティーハンター』と見なすことは全く出来ないのですが、実写ストⅡという特大のトンチキをかましているので珍品としては愛せる作品です。春麗ジャッキーのとこだけ切り抜いて保存しておきたい。