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マリアの胃袋のhorahukiのレビュー・感想・評価

マリアの胃袋(1990年製作の映画)
3.7
お醤油の味がキツイ!!

若い女を食うことで若さを保とうとする元モデルのマリアとその不倫相手のエジマの幽霊カップルが、観光に来た日本人を殺しては食べまくる脱力系食人コメディホラー。

冒頭、マリアとエジマが交通事故で死ぬシーンからシュールさが漂ってて笑った。横転しそうになった車が縦に直立して止まるという完全に笑わせにきてるアホらしさ。そうはならんやろ…。

どこかわかんないけど、ハワイっぽさ溢れるリゾート地にやってきた4人組のOLと熟年不倫カップルがエジマに狙われるんだけど、このエジマがテキトーさ溢れる男で、アロハシャツ着て観光で浮かれてる女客をナンパして殺しては死体をマリアのとこに運んでる。独特の空気感が演じてる柄本明のイメージにぴったり。

主人公のOLショウコがこのエジマのことを好きになっちゃうもんだから、さらにコメディ要素が強くなって、ショウコの同僚たちが死んでいってるのに全く悲愴感が漂わないし、死んだ奴なんてどーでも良いからマリアからエジマを救いたい的なお話になっていくというバブル感の抜け切らないオトボケな緩さや能天気さが見てて楽しくなって来る。

死体をトラックに積み込むエジマを雲間が開けていくように照らす満月とか、マリアが住む廃墟を印象的に照らす紫を基調にしたライティングとか凄く良かったし、マリアの部屋へと近づいていくにつれてドライアイスの煙が足元を覆うゴシックホラーを思わせる空気感も好きでした。

お互いに縛り付けられた過去への執着から解き放たれ形は違うにしろ前へと進む道は明暗というべきか生死というべきかはわからないけど別れていて、それでもどちらにしても物悲しさは漂うにしてもほんの少しの救いが感じられたような気がして良かった。

「なんだか食欲なくて…」と男の前で言って少食気取りつつも男の目の届かないところでカツ丼大盛り頼むカツ丼狂の爆食オバさんとか、誰でも良いから心中相手を探してる胡麻擂りとゴルフの達人の胃がんオジさんとか、友だちが何人居なくなろうが全く気せずに観光をエンジョイする先輩OLとか、美とは程遠い肉団子みたいなマリアさんとか、強烈キャラだらけでキャラ渋滞起こしてるのも楽しかったです。

多分こんな高スコアつける映画じゃないと思うんだけど、空気感がツボすぎて好きでした。『学校の怪談』の監督だと知って何となく納得。あっちも大好きなので(笑)
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