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エレファント・マンのKKMXのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
4.1
 イカれた映画ばっかり撮っているキチGUY監督リンチの作品とは思えない、スタンダードな造りの映画でした。普通に胸に沁みる感動作。

 とはいえ、異形の者の悲しさを描いた本作はとてもリンチっぽいとも思えます。

 その風貌から見世物小屋の興行師バイツの所有物として生きていたジョン・メリックさん。しかし、彼を見て興味をひかれた医学者トリーブスに引き取られ、実は高い知性を持つ心優しい人物とわかり、彼のQOLは上がっていく…そんな話でした。

 トリーブスは、自分はバイツと同じでメリックさんを見世物にしてあるのでは、との葛藤で苦しみますが、はっきり言って倫理的には一緒だと思います。なにしろメリックさんとの関係は学者的な興味からスタートしてますし。学会発表のシーンなんて見世物小屋よりひどいモンです。「驚くべきことに、生殖器は正常です」とか、なんという羞恥プレイだ!
 しかし、その後トリーブスはメリックさんの尊厳を大事にするよう心がけています。見世物の仕方も、彼を奇異な存在としてではなく、すごい風貌だが心は綺麗みたいなプレゼンを結果的にしてます。対象も社交界で、実際にケンドール夫人みたいな福祉マインドの強い人と交流できました。ヴィクトリア女王からの声かけもあったし。
 なので、現実的にはメリックさんのQOLも自尊心もガン上がりだと思うので、トリーブスは単純に良いことしてるな、と思ってます。葛藤するのも彼の誠実さの現れですよね。

 あと、『ワンダー 君は太陽』でも描写されていましたが、外見ってある程度慣れますね。初めてメリックさんを見たときはかなりビビりましたが、物語が進むにつれて、「メリックさん、目が綺麗じゃん」とか思うようになりました。内面に魅力があると、外見に対する印象も変わっていくな、と実感しました。


 実はエレファントマンとはリンチ自身なのではないか、と考えています。
 『イレイザーヘッド』を撮るほど頭のおかしいリンチは、日常生活に心から適応できていたとはとても思えません。そのため「自分は異形の存在だ」と実感していたのではないでしょうか。
 しかし、『イレイザーヘッド』でカルト監督としてある程度の名声を得て、本作のような規模の作品を撮ることができるくらい世間から承認されました。異形であっても真価が認められる喜びが本作から伝わってきたため、意識的かどうかは不明ですが、少なくとも無意識的にリンチはメリックに自分を重ねていたのでは、なんて想像しております。
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