滝和也

パンズ・ラビリンスの滝和也のレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.7
究極の現実と空想の
狭間に…。
平和と反戦の祈りを
込めて、レクイエム
は奏でられる…。

「パンズ・ラビリンス」

ダーク・ファンタジーの言葉だけでは片付けられない佳作。ギレルモ・デル・トロの現実を見る目のシビアさと空想の世界ですらリアルに創造するエグみを噛みしめる作品でございました…。

第二次世界大戦中のスペイン内戦。フランコ独裁政権による、左派狩りは終局を迎えつつあった。山岳地帯へ逃げ込んだ左派レジスタンスを狩りだすための砦に向かう車列。その中には指揮官である大尉と再婚した臨月の母と少女オフェーリア。車を降りた彼女がそこにある石像に石をはめ込むと飛び出した虫…。それは彼女を異世界に誘うはじまりだった…。

「ラビリンス」「バンデットQ」「ネバーエンディングストーリー」と80sファンタジー作品で育ちましたおっさんです。(80s傑作選にてこちらはまた…)ファンタジーと聞くと多かれ少なかれ、現実とのギャップや逃避、そして成長し、辛い現実に帰って行くと言う部分があるわけです…。まぁおとぎ話や童話と言う物は本来そういう物ですし…。それを究極的に煮詰めたお話でしょうか。

余りに現実がシビア過ぎる…。戦時かつ最前線。守ってくれるはずの母は臨月…。しかも相手は継父…。厳しい軍人であり、敵に拷問もしちゃう方…。更にグロゴア描写もリアルで現実の恐ろしさを叩きつけてくる…。

彼女が逃避したかの様に現れる異世界の住人たち…。それもリアル?なその造形と存在感。悪夢の住人たちのよう…。羊は悪魔ですし、掌に目のついたアレはシャレにならんし…。

それが交互に描かれ、比重は現実の方にやや重きが置かれているため、よりギャップの凄さがあり、強烈な印象を残します。現実世界のほうが余りにも狂っている…、まだ悪夢でも異世界のほうがマシ。反戦的なメッセージが強く打ち出されています。以下ちょっとネタバレ…





幼い少女の成長を感じさせ、ハッピーともバッドエンドともとれるのですが、

マッチ売りの少女…

にしか、私には思えず。マッチ売りの少女は果たして幸せなのか…。大人になっても答えのでない、半端なオッサンは好きなお話とは言い切れない…。ファンタジーと反戦の恐るべき融合であり、幼き頃の疑問を思い出させる作品でした…。

う〜ん、マジンガー親父にはパシフィック・リムの方が向いている(^^)
滝和也

滝和也