KKMX

アデルの恋の物語のKKMXのレビュー・感想・評価

アデルの恋の物語(1975年製作の映画)
3.0
 いわゆるストーカーの作品。恋愛モノではなく、嫌われている相手にも付きまとい続ければ恋は成就するという妄想がベースとなっているサイコホラーですね。個人的にはまったく趣味ではなかったです。主演のイザベル・アジャーニは面長色白ゴージャスなロングヘアと自分好みでありましたが。


 アデルはヴィクトル・ユゴーの娘で実在の人物とのことですが、本作を観る限りは実害のあるストーカー女ですね。姉の死やユゴーの娘というプレッシャーからアデルは生きづらそうな様子ですが、生きづらいという範疇を超えていおり、完全にイッてる人でした。元カレ・ピントンに執着し、散々袖にされているにも関わらず、父ヴィクトルに結婚したと虚偽報告し、メディアに報じさせる等やってることはかなり悪質。現代日本であれば接近禁止命令が出るレベルです。しかし、当時はストーカーなんて便利な言葉もなく、特に法的に制限をさせることも難しい。アデルのストーキングはエスカレートしていきます。心霊術のくだりは割と面白かったですが、基本的にはアデルのストーキングをずっと見てる感じでした。ピントンが「君の場合、愛ではなくエゴイズムだ」とズバリ言い切ってましたが、ここまで行くと妄想なのでエゴイズムの範疇すら越えていると思います。
 激ヤバ女アデルですが、ピュアが故にヤバくなった人なので、実害が及ばない人からは良く思われやすいです。下宿先でアデルの世話を焼くサンダース夫妻がいい人たちで、アデルを可愛がっているのがなんとも切ない。犯罪者の周りの人たちの頻出コメントで、犯人に対して「あんなことをする人には思えなかった」というものがありますが、キンスキーみたいな例外を除いて人は関係性の中でヤバくなるんだな、と理解しました。

 狂気は関心あるジャンルなのですが、クラウス・キンスキー的なアッパーでパラノイアなやつかデヴィッド・リンチ的なスキゾフレニアなやつが好みでして、アデルのようなねっとりと執着するエロトマニアっぽいのは好みじゃないのです(wikiったところ、アデルは『ボーダーライン・エロトマニア型妄想性障害』に近い印象を受けた)。
 なので、いくらアジャーニが好みのタイプとはいえ、面白くなかったですね。今回のアジャーニは狂った表情が多いため、ずっとエッチなイキフンだった『ノスフェラトゥ』の方が目の保養になりました。でも、本作でのメガネっ子アジャーニちゃんはカワイかった。
 ちなみに作品への興味の無さは『ノスフェラトゥ』と本作は同等。グッと来るガーエーに出会えれば俺もちゃんとしたアジャーニファンになるんですがねぇ。


 『突然、炎のごとく』でも恋のダークサイドとヤバい女を描いていたトリュフォー。この人はきっとボダ障入った女に引っかかってヒデェ目に合った経験があるのでしょう!『突然〜』では恋の炎に焼かれて互いに死にさらす男女を描きましたが、今回男の方はヤバいヤバいとなんとか逃げてます。なので火だるまになるのはストーカー女アデルのみ。ヤバい異性には触らぬ神に祟りなし、接触しないに限ります。
KKMX

KKMX