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イディオッツのHKのレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
3.8
ラースフォントリアー初期監督作品

障碍者を演じることで自らをさらけ出すことによって、精神の解放を望む集団Idiotsに惹かれるカレンと、彼らの生活を中心に映画は進む。

自分も、過去に自分がどれだけ馬鹿で、社会人としてダメダメだと思ったことが何度もありますが、正にここにいる人たちも社会というレールにいるには、ちょっとだけ駄目な所がある人達なのだと思う。

だからこそ、その馬鹿で愚かな所をさらに露呈することによって、開き直ることにより自らの自尊心を保とうとした集団が彼らなのだろう。そういう部分は自分にも共感できる部分がある。

自分も仕事でみんなが出来ることを出来ないときに劣等感を抱くことがあり、そんなときに簡単な作業だけで仕事を認められる障碍者に少し嫉妬を抱いてしまうことが多い。そんな劣等感を抱いているなら、いっそなってしまった方が、そういう煮詰った気持ちも解き放たれて真の心の自由を得ることができるというのが、彼らの目的だとすると、何とも言えない気分になるのである。

しかし、本物の障碍者の前でそれをやってしまうと罪悪感やら焦燥感に駆られてしまうというのも人間らしい。そんな人間の魂の解放というものに魅了されてしまった者たちのちょっとした現実からの逃避行なのかもしれない。

宗教や掟などの社会性や理性などを解放されて初めて、真の自由というものを得ることができるというのはトリアー作品のどれでも見受けられる気がする。ある意味園子温さんと同じような作家性が見受けられる。園監督のほうがもうちょっとワイルドで怒りの爆発を重視するのに対し、トリアーさんは性の爆発というものを強調しているのではないのだろうか。

まあ、いずれにせよ、トリアーさんらしい、人間の本質的な場面を描く素晴らしい作品であった。
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