「なんで女はサッカーを観られないわけ？」「女には聞かせられないようなひどい悪口をみんな言うからだ」「悪口が問題なの？ じゃあ悪口を聞かないようにするわ」「……とにかく女は男といっしょに観戦ができないんだ」。性差別の根源的な無根拠さをユーモラスに語りながら、現代イランの政治状況、社会問題に切りこんでいる快作。この映画がおもしろいのは、サッカーを直接的に映さずに少女たちのいきいきとした会話や試合の再現、軍人たちのおぼつかない実況などをとおして、間接的にサッカーの熱狂を語っているところ。パワフルな“サッカー女子”たちの活躍 (といってもほぼ全編軟禁されているのだけれど (笑) ) にはすがすがしいものがある。映画の最終シークエンスが見事で、ひとりの少女のスタジアムへの闖入の理由が明かされることで、勝利のお祭りさわぎが追悼と鎮魂の意味を帯びていく。軍人たちが貧農出身、というところもミソ。
