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河のRのレビュー・感想・評価

(1951年製作の映画)
4.7
ご覧ください、この面白くなさそうなジャケット。昔の映画をいっぱい見よう期間をもうけて、少しずつ進めてるのですが、自分が喜んで選ばなそうなのを敢えて見るときを作っています、しかし、これは見始めキツかった。ぜんぜん興味わかへん。が、しかし、見終わったあとのこの深い深い幸福感、とても豊かな時間を過ごせたあとにのみ許されるこの深い充足の気持ちはいずこより来れり。それは、この映画全体に吹き込まれた生命の呼吸、その躍動、終焉……そして生命の円環への讃歌となっているところから来ているのではなかろうか。お話のベースはマジどうでもいい恋愛ストーリーなんす。けど、それを通して、人間の生と死、性の目覚めを、駘蕩として流るるガンジス川をバックドロップに描いた優美な作品となっている。主人公は、ガンジス川流域に暮らし、黄麻工場を営むイギリス人一家の長女14歳のハリエット。彼女にはふたりの友人がいて、当地地主のひとり娘ヴァレリー、お隣さんの印英混血のメラニー。まさに思春期真っ只中にいる娘たちが、お隣さん宅を訪れる若き退役軍人ジョンに一目惚れし、それぞれに恋心を募らせていく様子が描かれていく。コイツらアホちゃうかなってなるシーンがいくつもあるけど、若いということはそういうことですよね。ヴァレリーのジョンへの積極的アタックはまぁ分かる、そりゃゴリゴリ攻めて自分のものにしたいだろうよ。反対に、メラニーの想いは控えめである。白人との混血とはいえ、かなりインド色が強いので、白人のジョンと私は釣り合わないと思ってる。そんなこと1ミリたりとも気にしなくていいのに。「私が嫌いなのは自分よ……」と悲しむメラニーに、ジョンが共鳴するシーンは大変印象的だ。ジョンもある重大な点において自分のことをよく思えていないから。でもこの人たちはぜんぜんいいですわ。ボク的に問題アリなのは主人公のハリエット。自信なくて、卑屈で、遠回しで、嫉妬深く、イラチという……ちょっと受け付け難いクソガキ。見てるこっちがイライラするわ。言い過ぎましたが、さて、彼女たちの憧憬の対象となっているジョンはいかなる男かというと、ごくフツー。彼に関してはものすごく表面的な描写しかないので、おいおい、結局見た目が好きなだけかよって思って、目を凝らして見てみるけど、そんなにイケメンというわけでもない。この子らの感情……謎すぎる……と思いましたけど、よくよく考えてみると、自分も昔はそんな感じだったかもなーと。思春期のときって中身とかほとんど関係ないもんね。遠くから眺めてるだけで勝手に恋心を抱いたりとか。そういうもんかーとあれこれ考えながら見てましたよ。映像的にはすごく快い明るさがあふれていて、ぶーたれながらも心が洗われていくような気持ちがした。あらゆるシーンに笑みが浮かび上がる、すばらしいストーリーテリング。とりわけ僕が好きだったのは、ハリエットがジョンとヴァレリーにヒンズーの愛の物語を聴かせるシーン。彼女のお話の中ではお隣の混血メアリーが主人公で、彼女がインド音楽に合わせて延々とダンスを踊るシーンがあるんすけど、東洋の妖しい色気を感じさせるエキゾチックな音楽に踊るメアリーの魅惑のダンスをジッと見てると催眠術にかかったような不思議な心地に。あと、そのちょい後に出てくる赤ちゃんが可愛すぎて死ぬかと思った! かわいすぎる!!! で、いろいろとどうでもいい性の目覚めパートがあってからの、衝撃……! いやー、確かに、大丈夫なんかな?って気にはなってたけど……まさかそんなことになろうとは。ナンとお母さんが泣き崩れるシーンは、胸が痛かった。そして、生まれくる命、滔々と流れるガンジス。文句言いながらも最終的にはすばらしい作品であるとしか言いようがありませんでした。ジャケットだけで食わず嫌いしていた過去のボク。実際見てみることの重要性をまたまた感じました。今後も食わず嫌い克服やっていこうとおもいます😆
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