このレビューはネタバレを含みます
イギリスの田舎町に暮らす老夫婦。核戦争が忍び寄る中、夫は政府の手引き書に従い簡易シェルターを作るが、そんなある日、原子爆弾が炸裂する。
アニメーションで核と放射能の恐怖を見事に描き切った、イギリスの傑作アニメーション。
老夫婦は初撃である爆風と熱からは生き延びるものの、放射能について無知であるが故に被爆し、物語の終盤には見るも無惨に衰弱していく…。
その淡々とした日常の崩壊する様子が痛々しく、とても哀しい。飲み水が無くなったからといって、核爆発後の雨水を「雨水が一番キレイなんだよ、これは常識だよ」と言って飲料用に使うなんて…。
夫は政府を盲信し、被爆後も必ず救援隊が来ると信じ切っている。
妻は政治には関心はなく、戦争になっても日常生活を守ることが第一義の様に考えている。
どちらもある意味で純粋で純真な善意の人であって、このような悲劇に遭う運命であるなんて、とてもいたたまれない気分になるが…。
この作品は正にそれが狙いであって、主人公夫婦が善人であるからこそ、その悲劇を通じて人類の“核戦争”という愚行が痛烈に心に響くんだよね。
アニメーションによる人物と、実写模型の背景を組み合わせた画はなかなか効果的。
最初に“シェルター”に潜った時にガタガタ揺れる戸板と、ラストの芋袋は印象に残る。
演出面で無駄なズームが何度かあったのが気になったけど、色んな意味で心に焼き付く名作であることは間違いない。