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ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレのHKのレビュー・感想・評価

3.6
天才チェリスト、ジャクリーヌデュプレの伝記小説を映画化した作品。監督はアナンド・タッカー。キャストはエミリー・ワトソン、レイチェル・グリフィスなどなど

教育熱心な母親のもと、楽器の演奏を小さいころから施された二人の姉妹。姉はフルート、妹はチェロを愛用していた。初めは姉のが優秀だったが徐々に妹の才能が開花。その後もコンクールで破竹の勢いで受賞をした妹は20世紀の代表するチェリスト、ジャクリーヌデュプレであった。そんな彼女の一生を平凡な人生を送った姉と対照させながら情緒的に物語る。

この物語自体は、妹が難病の多発性脳脊髄硬化症にかかってしまい息を引き取るまでを描いている。オーソドックスな伝記映画となっている。しかし、原作が妹を看取った姉が書いたものであるため、所々姉の主観が入っていると言われている。

そのためか、この映画で描かれているジャクリーヌデュプレは、実際の人間よりもかなりファナティックでヒステリックに描かれている。映画内では人道的でないことをやってしまう。

ただ、もともと不倫とか他人の内輪事情とか正直言ってどうでもいい自分としてはこれくらいの出来事自体別に大したことではなかった。寧ろもっとドロドロとしたものを楽しみにしていた自分としてはちょっとばかり迫力不足。

しかし、映画内における終盤の展開は、やはり難病を扱っているのと、エミリーワトソンの迫真の演技のためか胸に来るものがなくはなかった。あの後あの姉妹は結局のところ仲直りができなかったんでしょうかね。

この映画のいちばんの功労賞は、やはりエミリーワトソンさんじゃないのでしょうか、「奇跡の海」「リベリオン」などでもどこか情緒不安定な女性をやらせればアメリカ映画では一番ではないのでしょうか。今回はそれにとても磨きがかかっていますね。

今回の映画の構造としては、前半は平凡な姉目線からの客観的な彼女の半生、後半は才能があり世間に弄ばれた妹の視点からの彼女の主観的な視点からの展開という2部構成となっており、これがまあ斬新でした。

個人的には、やはり天才の人たちも自分ひとりで悩みを抱えてしまう以上、孤独感などに苛まされたあげくあんな行動に出てしまうのかと思うとちょっと複雑な気持ちになりましたね。やはりそういう才能がある人たちでもああいう独特の悩みというのがあるのというのがよくわかりました。

それゆえ、自暴自棄になり最終的には狂ってしまう彼女の人生。それでも演奏シーンは素晴らしかったです。
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