「黒澤の野郎! あいつの家にバズーカぶっ放してやるからな!」
さすがの三船敏郎も、黒澤監督の無茶苦茶な演出には烈火の如く怒った。
恐怖の表情を引き出すためとは言え、あれだけの矢を放たれては、生きている心地がしなかったろう。しかも、射手は、プロではなく学生さんだったのだから、その恐怖は推して知るべしである。
今だったら確実にコンプライアンス違反だが、黒澤さんに法治国家の杓子定規な常識は通用しない。映画を作ることに対して一切の妥協を許さなかったからこそ、彼は伝説であり続けたのだ。
この作品は彼の生んだ伝説の一つである。
妖しくも美しい美の世界は、半世紀以上を経た今も、人々を魅了してやまない。