フラハティ

恋の秋のフラハティのレビュー・感想・評価

恋の秋(1998年製作の映画)
4.6
実りの訪れを感じさせる食物は収穫の時期を迎える。


四季の物語ラストは秋。
ロメール自身も、四季の物語は秋で締めるということを決めていたといい、本作の主演二人もロメール映画の常連。
主人公は従来作品のように若者ではなく、熟れた美しき女性。
フランスののどかな田舎の風景は、豊かな陽射しの煌めきとともに秋の気配を感じさせる。

子どもたちが巣立ち、また新たな女性としての人生が始まる。
友だちの恋人を代行で探す(しかも本人に変わって何度か会ったりする!)という狂ったストーリーから、普段のロメール調が混ざり合い、最後は含みを持たせたラストへとつながる。
“偶然”というのはこのシリーズでテーマとなっており、本作では偶然を操作し、運命を作り出そうとしている。
運命とは作り出すことではないが、偶然から生まれる自ずの主体性が人生の舵を切っていく。
運命の作り方はこういうことだと言わんばかりの本作の展開は見事。

若い頃は見栄とかで自分らしさを埋没させてしまい、純粋な気持ちを隠してしまうこともあったりするが、歳を重ねていくと…?これまた見栄をはったりしてしまうのである。
異性でも同性でも、人として尊敬できる人や好きな人がいることは、その人が豊かな人生を送ることができる一因だと思う。


哲学を教えている先生は教え子たちに夢中で、彼が最終的に手に入れられるのは一体なんだろうな?と感じてしまう。
哲学性を持っているから人として優れているとか、モテるから優れているとかってわけではなく、本質的な豊かさを自己の中で確立していることや、周りの人を大切にすることが大事なんだと語っているように感じる。
性愛が空虚なものとまでは言わないが、やはり恋人とか友だちとか家族とか、そういったものを大切にしていきたいと思う。
ずっと信じ続けられるもの。
ずっと愛せるもの。
そういうものこそ偶然の産物だが、大事にしていけるのは自分の意思でしかないんだよなぁ。


恋愛だけでなく、人生そのものや価値観を感じさせる本作はまさに豊潤な秋の季節と呼ぶに相応しい。
ロメールからしたら、娘たちの人生を描いているようなもんだし。
誰だって誰からも愛されたい。
人と関わるのは本作のようにめんどくさいことも多いけど、面白いことも多く、偶然に身を任せることも肩の荷を降ろす感覚で持っていたい。
もちろん自分の気持ちにうそはつかないように。

ロメールの映画が好きな人は、こんだけの会話も不快にならないってことだし、人生経験豊かそうだ。あと変態っぽい。(と勝手に思っているだけ)
けどそんなんだからロメールは愛されているんだと思う。
ロメールはつもりでいいんだよ、わかったつもりで。
フラハティ

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