うめまつ

お葬式のうめまつのレビュー・感想・評価

お葬式(1984年製作の映画)
4.4
The Japanese Traditional『OSOHSHIKI』って感じ。弔いの儀式も調理次第で味わい深いエンタメになる。棺の値段、お寿司の数、挨拶の例文、お布施の相場、火葬の温度。儀式にまつわるあれやこれやのTO DOリストは《死》という巨大な怪物と対峙する前の準備運動のようなものなのかも。いきなり向き合うには丸腰過ぎるから、みんなで一旦集まって悲しみを分散させたり、思い出話を共有したり、他愛もない事で笑ったり、お金という数字で割り切れる勘定をしたり、目の前の雑事で気を紛らわしたりしながら、喪失を受け入れるまでの時間稼ぎをしているのだ。

うなぎとハムとアボカード/サンドイッチカーチェイス/勲章付きの遺影/丸太のブランコ/酒と涙と島倉千代子/屋根から見た景色/風に舞う香典/仏と共に生きるということ

固い箱に押し込められた死と地中を蠢く虫のように生々しい性。通夜振る舞いの後のしんみりした涙。山崎努のお悪戯が過ぎるくらいで後は粛々と通夜と葬儀が執り行われているだけなのに、三日間の中に人間の可笑しみと嫌らしさと不思議な愛おしさがギュッと詰まってる。外から眺めた形式的な『お葬式』に滑稽さを加えつつ、そこに入り組む人間模様や営みの対比を炙り出す手腕が見事過ぎる。菅井きんさんの挨拶で泣けなくなったら感情機能が低下しつつあると思うので、良いバロメーターになりそうだ。私も逝く季節を選べるなら春が良い。
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