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犬神家の一族のabeeのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(2006年製作の映画)
3.1
【ミステリーは偶然に…】

名前だけは聞いたことがある。
「犬神家」「金田一耕助」「スケキヨ」…
シーンだけは観たことがある。
白いゴムマスク、ガニ股で湖に突き刺さった肢体。
このストーリーを知らないことは日本人としてダメなのではないか。

そんな気持ちから鑑賞した本作。
しかもセルフリメイク版。
これはオリジナルを鑑賞した方が良かったか?

当主の死から相続問題に直面した「犬神家」。
当主の残した遺書を巡り取り返しのつかない事件が起こると予感した弁護士により呼び出された探偵・金田一耕助が、呪われた一族の謎に迫る家系図ミステリー。

こういうの「家系図ミステリー」って言うんですね。
カッコいいね、「家系図ミステリー」。
こないだ鑑賞した「ドラゴン・タトゥの女」も家系図ミステリーでしたね。

ストーリーは面白いんですよね。
遺書の内容から醜い争いを繰り広げる犬神家の人々。
そして遺書が公開された直後に巻き起こる連続殺人事件。
家族を誰も信用できなくなる程に、捻れた歴史を持つ犬神家の家系図。

これは市川監督のポリシーなのでしょうか?
技術が進化した現代において、あえて人形であることが丸わかりの生首や小道具。
それを自然に見せるようにあえて映像の精度を低くしても、生首の断面からはその生々しさは感じられず。
現代だからこその古臭さをとても感じる映像でした。

それは演出においても。
とても古臭さを感じたのです。

一番辛かったのは。
事件が解決に向かい動いた瞬間。
タイミングと謎が明かされた方法がつまらなかったのですね。
金田一耕助という探偵が存在する意味が無かったように思います。
彼がいなくても恐らく事件は解決したはず。

この作品の主役は金田一耕助ではなく「犬神家の家系図」。
面白いのはその家系図の成り立ちであって、それは金田一さんがいなくても警察が無能でなきゃ、明るみに出るのです。
そんな風に思ってしまったら最後。
最後の最後に叩き落されるかのようにテンションは下がり、作品の面白さは半減です。

ということで、120分頃までは比較的楽しんで鑑賞しました。
そこからラストまでの20分ほどに面白味がありませんでした。
もっと小出しに事件解決に繋がる手がかりやフラグを立てて欲しかった。
ミステリーとしては淡々としていて観客にオチを想像させる余地を与えてくれないように感じたのですね。
やはりメインは犬神家の家系図と歴史。
身内同士の遺産を巡ったドロドロを楽しむことが正しい鑑賞方法かと思います。
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