踊る猫

ディス・イズ・イングランドの踊る猫のレビュー・感想・評価

4.3
なるほど「ちゃちな」というか、ホームドラマにも似た小さなスケールの中で語られる、ありがちな人情噺ではある。だが、ナメてはいけないとも思った。髪型をスキンヘッドにして颯爽と歩くショーンは、同じ仲間(いや、「ダチ」かな?)とつるんで酒を覚え、初めての女の子の味を知る。だが彼の前に元ムショ帰りの国粋主義者が現れることから雲行きは怪しくなっていく……というようなスジ。ケン・ローチやダニー・ボイル、ジョン・カーニーの映画などを全部ではないにしろ観てきた者として、そういった映画監督たちの作品と同種の匂いがプンプン漂うことに気づかされる。フラットに住む貧乏暮らしの若者たち。集団生活していると思しき彼らは、きっと国の福祉を頼って暮らしているのだろう。その若者たちのボンクラぶりが決してカッコ良さだけではなくカッコ悪さも含めて描かれているのは、実は撮り手が成熟した視点を備えていることの証左でもあるだろうと思う。ラストのショーンの行動に救われた。そうだ、君には国粋主義は似合わない。
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