じゅ

クロノスのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

クロノス(1992年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

1537年だかに錬金術師が作ったデバイス「クロノス」でうっかり不死を得てしまった骨董商の男ヘスス・グリス。腐りゆく身体と血の渇望でかつての自分ではなくなって行く男はどのような決断をし、男を愛する者たちは何を思うのか。
ちなみにヘススの表記はJesus。

永遠の生命の鍵たるクロノス。中央に四角錐の宝石らしきものをあしらった掌サイズの黄金の装置で、機械仕掛けの中身には奇妙な昆虫が蠢く。螺子を回すと動き出し、昆虫の脚を模ったような六本の針を使用者の身体に刺して本体を固定し、尻尾のような形の針をさらに使用者の身体に刺し込む。それで何かが起こるらしい。
ヘススが初めて使った時は、六本脚を刺された時点で驚いて引き剥がしたが、その夜何かに取り憑かれたかのように再び使用してしまう。六本脚を刺された時点で何らかの効果は生じるらしい。
クロノスの効果で驚異的な治癒力を発揮したり身体が若返ったりしていたが、クロノスを狙う伯父貴なる人物の部下アンヘルに一度殺される。その後蘇るが、以降は身体が腐っていく。ついでに日光に焼かれるようになる。伯父貴が持っていた手記にクロノス使用時のルールが記載されていた(そのページは伯父貴が食べてしまった)らしいが、そのルールから逸れたからだろうか。あるいは単に一度死んだからか。
身体は腐っていくが、腐った表面を剥がすと白い真新しい皮膚が出てくる。まるで昆虫の脱皮みたい。
伯父貴の屋敷に手記を奪いに入った際、いろいろあって伯父貴とアンヘルを殺害する。そこに付いて来ていた孫娘アウロラの手の出血を舐めようとしたとき、最後の理性で以って自らを制し、伯父貴に「クロノスを破壊すると使用者も死ぬ」と言われていたにも関わらずクロノスを破壊する。
明朝、本当に死んだヘススの手を握るアウロラと妻メルセデスを朝日が包む。

永遠の生命とか血の渇望とか日光に焼かれるという辺り、吸血鬼の類の一環か。謎の装置から針が飛び出して身体に刺さって吸血鬼になると書いたら、一部の人はジョジョを連想するだろうか。
ただこの話の主題は、錬金術師が造った古の装置の謎とかそれを狙う陰謀が巻き起こすスリラーとか不死の吸血鬼の脅威みたいなところではないように思う。手記に書かれていたはずの大事な秘密も伯父貴がページを食ったままその内容が明かされずに終わるし。
それより、人間の愛の話だろう。ヘススはメルセデスを想い続け、アウロラを手に掛ける前に自ら死を選び、そしてメルセデスは、ヘススが手紙で乞うた通り、変わり果てた姿の彼を変わらず受け入れた。メルセデスにとっては、若返った姿でも脱皮したみたいな姿になってもヘススは変わらずヘススだったということか。

スオ・テンポーリ!
じゅ

じゅ