Ricola

ナイト・オン・ザ・プラネットのRicolaのレビュー・感想・評価

3.7
タクシー運転手と乗客でないと出会わなかったであろう人々。

ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの同じ時間に起きているタクシーでの出来事をまとめたオムニバス作品。


ロサンゼルスでの運命?の出会い、NYでの立場逆転が起こってしまうほどのカオスさ、パリでの序列と偏見、ローマでの大(!?)事件、ヘルシンキはやはり
アキ・カウリスマキ。

それぞれその土地らしさを感じられる出来事や、人々ばかりで面白いが、個人的に特に好きなのはロサンゼルスとヘルシンキ。

ロサンゼルスでは不良少女なウィノナ・ライダーと敏腕プロデューサーのジーナ・ローランズ。
奔放なウィノナと、だんだんと観察に変わっていくジーナの表情。
彼女たちの出会いから別れまで、ドラマが詰まっていて短くてもとても満足できる。

ヘルシンキ編は、ジム・ジャームッシュ監督が仲がいいという、アキ・カウリスマキへのオマージュを感じられるという意味でも面白い作品である。

失業した男とその友人たちをタクシーは客として乗せる。
何気ない会話からだんだんと人生相談に発展していく。

人生における切なさと残酷さを、哀愁と優しさでたっぷり包み込みつつ、偽善者ぶって嘘は描かないという点は、カウリスマキと一緒だった。
ここに酒とポーカーフェイスとロックさえあれば…もうただのカウリスマキ作品になってしまうと思ってしまうほど笑

タクシーって運転手と客がある一定時間密室に閉じ込められているようなもので、そこでじっくり深い会話もできてしまう。だけどその関係性はそれっきり、ということがほとんどだろう。
(わたしも前にタクシーの運転手さんから美術館の割引券をいただいたことがあったり。行ける時間がなく、むだにしてしまったけれど笑)

この特殊な状況は、いつどこの地においても起こっている。
そのタクシーという唯一無二な空間とそこで起こる小さなドラマは、日常的であるからこそ、より確実性をもって、わたしたちの心にトキメキや刺激をもたらしてくれるのだろう。
Ricola

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