Ricola

ヨーロッパ一九五一年のRicolaのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ一九五一年(1952年製作の映画)
3.8
罪滅ぼしなのか?それとも政治的目的?
ただ人のために見返りを求めずに善行をしているだけなのに、なぜそんなにも敵意を向けられなければならないのだろう。
まるで、ローマ帝国に危険視されたイエス・キリストのようである。


ブルジョワの女性アイリーンをイングリッド・バーグマンが演じる。
華やかな社交場にいそしんでいた彼女だったが、ある出来事をきっかけに貧しい人々のために自らの労力や時間を捧げるようになる。

最初は趣味程度にやっているのだろうと周りから見られていたものの、アイリーンは実際の悲惨な状況や苦しさに直面することで、どんどんと思いが変わっていく。
アイリーンは、救いようのない悲惨な現実に対して結局立ち尽くすことしかできないのか。
工場で黙々と働く人々たちとその制度に対して、彼女はめまいさえするほど見るに耐えられないのだ。

彼女にはあまりにも理想主義的過ぎる部分があるが、それで彼女を馬鹿にするのは間違っている。
目を背けたくなるような世界に対しても真摯に向き合う彼女の何がおかしいのだろうか。
彼女に向けられる好奇の目、そして呆れられるのも彼らがどれほど俗に染まっているかがよくわかる。

ジュリエッタ・マシーナ演じるチャキチャキな肝っ玉母さんが救いのような存在であった。
貧乏でも明るくてとっても前向き。
アイリーンも彼女へ尊敬の眼差しを向けながら、癒やされていたはず。

善行には裏があるのでは、何か思惑があるのではと疑われる社会に絶望する。
ただどうにか自分にできることをしようと奮闘するアイリーンの成長にぐっとくる。
ラストの希望の光に、まだ世の中捨てたものではないと思わされ目頭が熱くなった。
Ricola

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