great兄やん

地下水道のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

地下水道(1956年製作の映画)
4.3
【一言で言うと】
「希望を騙る”絶望“」

[あらすじ]
1944年9月、第二次大戦中のポーランド。戦火で廃墟とかした首都ワルシャワでは、パルチザン部隊がドイツ軍への抵抗を続けていた。市の中央部へ行くには地下水道を通るしかなく、そこに入ったザドラ率いる中隊は、暗闇の中で出口を求めながら離ればなれになってしまう...。

初アンジェイ・ワイダ作品。

戦渦からの”逃げ道“は更なる”地獄“に苦しめられるという絶望。
圧巻のカメラワークから見えてくる”焦燥“、”疲弊“は画面からでも伝わってくるほどリアルで、完膚なきまでに希望を叩きのめした展開には目を逸らしたくとも観てしまう圧倒的な説得力を感じました😰

最近彼のBlu-rayBOXを購入したので少し前にTwitterで話題となったこちらから先に観たのだが、いやはや純粋に衝撃的な映画だった(・・;)...単なる胸糞を感じるような絶望ではなく、縋れるものが無い中での希望がより絶望への”落差“を高めているのが何よりも生々しい。

前半での地上の戦闘シーンに関しては迫力もあり、程よい緊張感を味わえるのだが、後半、特に地下水道で中隊がバラバラになってからがもう描写といい何もかもが凄すぎた。
蒸せ返るような汚水の中で出口を求め彷徨い続けるシーンは観ているこちらも苦しくなってきますし、隊員がだんだん精神に異常をきたしていく過程というのが余りにもリアルすぎてもはやホラー。というかホラーよりも怖い(゚o゚;;

最初は”隊員のため“に行動していった仲間たちも次第に”自分のため“と保身に走っていく姿は、何とも滑稽ながらも現実味を帯びてますし、実際この地下水道を通って逃げ延びた人達も精神的疲弊の”狂気“の中で逃げ切ったんだろうな…と当時のポーランド人の強靭な”不屈“精神をも感じましたね😔...

とにかく僅かな希望ですら残酷にも絶望に突き落とされる恐怖に、釘付けになりながらも果てしない“暗黒”に心が蝕まれるような一本でした。

中隊員を演じたキャスト陣の演技力も筆舌に尽くしがたい素晴らしさでしたし、何よりも描写の力強さというのがマジで半端ない。

本当の“敵”はドイツ兵ではなく己の“ヒロイズム”という皮肉...こんな強烈な秀作を作り上げたワイダ監督はある意味戦争においての“事実”が見えていたのでしょうね🤔...