とりん

デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!!黄金のデジメンタルのとりんのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

テレビアニメシリーズ02の番外編にあたる作品。
これまでの劇場版は全て本編と絡みがあったが、今作は全く本編に影響はなく、むしろアナザーストーリーのような扱いである。

タケルとヒカリがNYにいるミミのところに遊びに行っている時に、太一たちデジヴァイス(旧)を持った子供たちが全て消えるという事件が起きる。
そこである少年ウォレスとそのパートナーデジモンのグミモン(テリアモン)と出会い、その消えた謎が7年前に生き別れたもう一匹のパートナーデジモンであることを知る。
悲しくも一匹で生きてきたそのパートナーデジモン、チョコモンはその時に自分というものを見失っているように思う。
ずっと暗闇の中にウォレスを探し続け、その悲しみと寂しさから暗黒進化を果たしているようである。

最初は成熟期のウェンディモンとして会い、まだ自我を留め、ウォレスを探しているかに見える。
ただし彼が探しているのは生き別れた時のウォレスであり、今のウォレスではなかった。
チョコモンはデジヴァイスという手がかりだけでウォレスを探そうとし、当時の選ばれし子供達(旧デジヴァイスを持った子供)をさらい、時間を巻き戻して、ウォレスを探していた。
そしてウェンディモンがもう元のチョコモンの意思を戻さないことを知ったウォレスは戦うことを決意する。
そこからウェンディモンはアンティラモン、ケルビモンと究極体まで進化し、大輔たちのまえに立ちはだかる。

普通に考えてアーマー体レベルで完全体や究極体と戦うことは不可能である。
テリアモンもガルゴモンには進化するが、それも成熟期である。
途中からタケルとヒカリが合流し、エンジェモンとエンジェウーモンというチート的な光デジモンが参戦するが、手も足も出ず
原作ガン無視でセラフィモン、ホーリードラモンへと究極進化するという、ぶっ壊し設定まで飛び出す。
さすがにこれはやりすぎである。
その結果その光が大輔とウォレスに奇跡と運命のデジメンタルを導き、マグナモンとラピッドモンへと進化し、一度は押されるが、核であるウェンディモンと対峙し、倒すことへと繋がる。

いろいろツッコミどころは多いが、まず小学5年生が子供たちだけでたんしんNYへ行き、ヒッチハイクで旅できるわけがない、それも弾丸で。これが一番物申したい。
それからこの戦いが現実世界で行われていること。この時点での02アニメは現実世界での戦いは一切行われていない。
仮想デジタルワールドでダゴモンとは対峙しているが。
最終的な仮想世界はそれで説明つきそうだが、途中のウェンディモンとの戦いは、現実世界である。
現実世界でアーマー進化をするのはこれが最初で最後。
後に明らかになるが、アメリカ、世界中にも選ばれし子供達はたくさんいる。
あの旧デジヴァイスを持つのはもちろん太一たただけではない。アニメでもマイケルが出てくる。
だから太一たちだけさらわれるのもおかしな話である。
一番突っ込みたいのは究極進化についてだが、そこはもうやめておく。

映画だからという特別感を持たせるアナザーという区分けはできるが、視聴年齢層は圧倒的な子供相手にこれはなかなか厳しい、絶対混乱する。
そして何よりも映画全体の世界観。
ロードムービー感がかなり強く、クセもかなりある。
30手前となった今だからこそ、この雰囲気はすごく好きだし、雰囲気だけならデジモン映画で一番かもしれないくらい好きである。
ただいかんせんアニメシリーズとのギャップがすごい。
アニメシリーズは絵が悪くもかなり荒い部分が多い。
それに比べ今作はかなり繊細でキレイに丁寧に描かれている。
それは細田守監督のデジモンともまた違う
目がキラキラしてたり少し少女漫画チックでもある。
ただデジモンのアニメをタッチを変えるではなく上手く綺麗に描いたらこうなるというのを見せつけてくれたと思う。
これをアニメシリーズに取り入れたら、20年経った今でもかなり通用する絵である。
ちなみに進化はアニメシリーズの使い回しなのが残念。
そこはテリアモンたちと同じくサッと進化してくれたらよかったのに。

このロードムービー感はやはり子どもには難しく、そしてジュブナイル感ありの全体的にダークな雰囲気はとても受け入れがたい。一部はトラウマチックになりかけるところもある。
だから評価が低かったり、難作と言われるのではあるが。

でもそれらを踏まえてちゃんと大人が観ればかなり良い作品である。
絵だけでもそうだし、雰囲気や構成的にもアメリカのロードムービー感をしっかり出せてる。
これは製作者の狙い通りで、元々大輔ともう1人の主人公で本気のロードムービーをつくろうとしていたらしいから、それの名残が強いのだろう。

やはり見所はチョコモンとの決別であろう
チョコモンがずっとウォレスを求めていたように、ウォレス自身もチョコモンとそしてグミモンと一緒にずっといたい気持ちが強かったのだろう。
寂しさのあまり闇へと進化していくチョコモンに対し、自分があの生き別れた時にもっとちゃんと探せば、目を離さなければという自責の念も強いと思う。
そして決別を決めた時、戦わなければならない状況下、自分の大切なパートナーデジモンと戦う、つまり大切な友達に手をかけるということである これが現実に置き換えてもいかに辛いものか。
ウォレスの言葉数は少ないけど、それを大輔がしっかり語ってくれている。彼の代わりに涙も流す。

最後のトドメを刺す際にウェンディモンが僕を攻撃してという仕草を見せる。
正直この核への攻撃がなかったら勝ててなかったはずである。
そのウェンディモンの表情もまた。
そも彼が泣いていたこと、ウォレスを求めていたことでこの事件が始まった。
だから彼自身ももう自分の寂しさにケリをつける、この闇の連鎖を断ち切ることを選ぶ。
そこへ双子の兄弟同然のラピッドモンが最後にぶつけるラピッドファイアも胸が苦しくなるものだ。
これは鑑賞後に解説読んで納得して後付けになるが、グミモンとチョコモンは大人へと成長としようとする気持ちと幼いままでいたい気持ちの表れであり、大人へと成長するためにチョコモンを倒すという気持ちの面を体現したものでもあるというのだら。
だからこそチョコモンの最後の行動をああするしかなかったのである。
しかしさすがデジモン。
もう一度デジタマによる輪廻で再びチョコモン(ロップモン)と出会うシーンがエンドロールで描かれていてホッコリさせられる。

これまで観るのを避けてて、おそらくリアルタイムとその当時にレンタルしたくらいで無印、02のアニメ全4作の中では一番見た回数が少ない作品のはず。
でも今回見返したことで、この映画の良いところがたくさん見つかり、これからはもっとたくさん見返そうと思う。
とりん

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