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21グラムのRのレビュー・感想・評価

21グラム(2003年製作の映画)
4.7
ぐはぁ…めちゃくちゃ重い…こんな重くて深刻な映画が他にありますか。全編にわたる無限のヘビーさにもかかわらず、覚えてる限り、ユーモアのあるシーンがひとつかふたつくらいしかない。息抜きナシ。これは大変だ。大変だが、それに見合った感動がある。映画全体としては、時系列をパズルのピースのように細切れのバラバラにして複雑に再構成し、少しずつ全貌が見えるように組み立てたミステリーとなっている。はじめはどこからどこに話が進んでるのか分かりにくいけど、ドラマ要素がめちゃくちゃ濃いのとテンポの良さで、めんどくせぇな、って感じなく、グイグイ引っ張られていく。主人公は二人の男とひとりの女。ひとりは熱烈なキリスト教信者ジャックで、この世の全ては神の意志で進んでおり、神を信じ、神の救いを求めて生きれば、みんな幸せになれると信じている。毎週教会に通い、伝道に熱心で、自分の子どもたちにも強烈なクリスチャン教育を行っている。もう一人の男ポールは、心臓病を患っててドナー待ち、今のままでは余命は長くない。3人目のクリスティーナは、薬物問題を乗り越えた過去があるらしいが、今は幸せそのものの平穏で麗しい結婚生活を送っている……3人は何の関わりもなくそれぞれの人生を送っている。だが、その同じ冒頭で、半狂乱のクリスティーナが、血にまみれたポールを抱き起こし、救急車を呼んで!とジャックに向かって叫んでるショットが割り込んでくる。え⁈ どういうこと⁈ 一体この3人に何が起こったの⁈ そこから、3者の人生の断片が、過去現在未来シャッフルで展開、時制パズルのようなその語りは、前半では濃密なミステリーとして作用し、中盤ではすべてが明らかになる気持ちよさとエモーションの劇的なブーストとなり、さらに後半では、人生の一回性と不可逆性を痛いくらいに心に叩きつける苛烈さとなって、見てる我々のハートを傷つけてくる。もーね、重すぎる、苦しい、見てるのがつらい、ゲボが出る、けど、おもしろい! おもしろい! しかも、3人を演じる俳優、ベネチオデルトロ、ショーンペン、ナオミワッツが素晴らしすぎる! 信仰心の崩壊と罪悪感の重圧に苦しむ姿を最も重苦しく演じるデルトロ。ちょっとディカプリオに似てる気が…。人生がいつ突然終わるやもしれぬ身だが絶望せず一日一日の生を自分の愛のために生きるクールなペン。幸福の絶頂から悲嘆の地獄へと突き落とされぶるぶる震えるほど感情を爆発させるワッツ。ボクならば3人ともにアカデミー賞をあげましょう。彼らの演技に始終釘づけ! 特にナオミワッツはボクのもっとも好きな女優の一人で、彼女の最高の演技のひとつやと思います。結構派手に脱いでエッチしてますよ。セクシーというよりめちゃめちゃ痛々しい感じではあるが笑 ちなみに助演のシャルロットゲンズブールも演技、見た目、セリフまわし含めすべて最高です! さいっこうです! この時代はまだアンチクライスト以前で可愛いです。そして、ザラついた深みのある色彩と、乾いた哀しい慈しみを感じさせるギターサウンド。なんぴとたりともこれを涙なしに見るなんてことは無理なんじゃないでしょうか。イニャリトゥの長編は今んとこすべて見てますが、本作は2番目に好きです。
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