R

gerry ジェリーのRのレビュー・感想・評価

gerry ジェリー(2002年製作の映画)
4.4
久々に見てみた! 初めてみたときほどのインパクトはなかったけど、やっぱ面白い! とは言っても、ぜんぜん普通の面白さと違うんす。まずストーリーがほぼない。ふたりの若者が楽しそうにハイウェイの外れの広大な荒野に散歩に行って、そのまま道に迷って、気づけばin the middle of nowhere四方八方地平線という絶望的な状況の中、とにかくどこでもいいから辿り着けるよう、ひたすら歩きつづけるってだけの話。会話もほぼなく黙々と歩き、ざっざっと砂を踏む音だけが淡々と聞こえてくる。ひとつひとつのショットが、まったくアクションなく延々とのびていく。見る人によっては憤慨級のおもんなさだと思うんやけど、個人的には非常に面白い映画だと思う。なぜかと言うと、最初は軽い気持ちで歩き出したのにいつの間にかどこにもゴールの見えない不気味な荒野をあてなく彷徨うしかなくなってる様をじっと見てると、どうしても、そこに人生のメタファー的なモノを見出さないでは得なくなるから。人生の行き先や意味を追求することなく生きてるってのは、まさに本作の主人公ふたりと同じように、延々と不毛の荒野を歩きゆくことに似てる気がしてくる。さらに、そんな間延びした極限状態にあっては、どうあがいても自分という存在、そして絶対に避けられることのできない死に、まっすぐ意識が向かってしまう。進めば進むほど遠ざかる地平線、同時にぐんぐんこちらに近づいてくる死の絶望、けれど彼らには何も答えが与えられない、よって“どこか”というかすかな希望にすがって歩きつづけるしかない。少しずつ少しずつ変わっていく風景。色彩。最終的にはまるで宇宙を進んでいるかのようなシュールな映像と音響に変わっていき、見ているこちらが催眠術にかけられたようになり、意識がうすく溶け空間に広がっていく。ヘタしたら寝る! 途中からはもうSFホラーと呼んでもおかしくない感じにまでなっていく。そして起こってしまうとんでもない出来事。彼らは、あらゆる意味において、日常に戻ることができるのだろうか。解釈のほとんどを見る側に委ねた映画なので、映画は何も考えずに見たいという人には絶対オススメできないが、観ながら思考を促されるのが好きな人は是非とも見るべき作品だと思う。
R

R