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幽霊VS宇宙人
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『幽霊VS宇宙人』に投稿された感想・評価

本作は、清水崇監督による『ロックハンター伊右衛もん』と、豊島圭介監督による『略奪愛』の二本立てで構成され、その合間をハリセンボンの幕間パートがつないでいく、かなり異色のホラーギャグ・オムニバスです。

タイトルからは幽霊と宇宙人が正面から戦う娯楽大作を想像するかもしれませんが、実際にはホラー、SF、怪談、恋愛、ヤクザ映画、そしてバラエティ的な笑いを強引に混ぜ合わせた実験的な作品と言えます。Jホラーの文脈で語られることの多い二人の監督が、あえて恐怖を真正面から描くのではなく、その恐怖の記号を崩し、笑いやナンセンスの方向へずらしている点に本作の最大の特徴があります。

そのため、完成度の高い純粋なホラー映画を期待すると、かなり戸惑うことになります。怖がらせるための空気感こそあるものの、観る側をそこに没入させるより、むしろその空気自体を茶化し、壊し、別の方向へ転がしていくことに重心が置かれているからです。幽霊は恐怖の対象であると同時に滑稽な存在として描かれ、宇宙人もまた、脅威である以前に「場をかき乱す異物」として配置されています。

こうした作りは、どうしても観る人を選びます。物語は整理されているというより散らかっており、演出の低予算感も否めません。笑いの方向性もかなり内輪的であるため、作品全体に漂うチープさや悪ノリを楽しめないと、単に支離滅裂な映画に映る可能性が高いでしょう。実際、本作の評価が割れる原因もここにあります。「くだらなさ」を映画の魅力として受け取れるか、それとも弱さとして捉えてしまうか。その視点の違いが、そのまま評価の分かれ目になっています。

それでも、本作には「よくできた商業映画」とは別の意味で、見過ごしにくい面白さが宿っています。大きな枠組みでは通しにくい企画を、監督たちが極めて自由に遊んでいるからです。『呪怨』や『怪談新耳袋』などで恐怖を構築してきた彼らが、ここではその恐怖の裏側にあるばかばかしさや作り物感までも映画化しています。決して整った作品ではありませんが、Jホラーの作り手たちが自身のジャンルを一度裏返してみせた番外編として、非常に奇妙な存在感を放つ一作です。



※以下、ネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。



































本作の中心にあるのは、ホラーとギャグの境界を壊そうとする試みです。通常のホラー映画では、観客を怖がらせるために空間や音、間合いが慎重に設計されます。対して本作は、その設計手法を利用しながらも、最終的には恐怖の緊張を笑いへと反転させてしまいます。怖さを積み上げるのではなく、怖さが成立する寸前でその真顔を崩していく映画なのです。

清水崇監督の『ロックハンター伊右衛もん』は、『東海道四谷怪談』を下敷きに、ヤクザ映画と家庭ドラマ、さらには宇宙人侵略ものを強引に接続した作品です。序盤では、子供ができたことで極道から足を洗おうとする男の姿が描かれます。真っ当な父親になろうと足掻くものの、過去の暴力性や社会への不適応から抜け出せず、仕事にも家庭にも居場所を見つけられません。

この導入部分は、意外なほどシリアスです。父親になりきれない男、堅気になれない男、暴力でしか動けない男の人間ドラマとして見れば、かなり明確な芯があります。清水監督自身の当時の私的な葛藤が反映されているという文脈を踏まえると、この主人公の不安定さには、単なるギャグ映画の設定にとどまらない切実さが感じられます。

しかし物語は、その切実さを正面から掘り下げる方向へは進みません。主人公が追い詰められていくにつれ、世界観は四谷怪談的な怨念へと接近し、そこへさらに宇宙人という異物が乱入してきます。家庭の崩壊や父性の不安といったテーマは、いつの間にか幽霊と宇宙人の奇妙な抗争へと飲み込まれていくのです。

ここに、本作の面白さと弱さが同居しています。前半の重厚な人間ドラマを後半で意図的に壊していく展開は、ジャンルが解放されていく快感として楽しむこともできます。シリアスなヤクザ映画が怪談とSF、そしてナンセンスギャグに侵食されていく流れには、本作ならではの勢いがあるからです。とはいえ、前半のドラマが思いのほか重厚であるため、後半のバカバカしさへ飛び込むにはやや中途半端な印象も否めません。笑いに振り切るには重く、ドラマとして見るには崩しすぎている。その「あわい」に、このパート特有の不安定さが生じています。

一方、豊島圭介監督の『略奪愛』は、結婚を控えた男が、男たちの精気を吸い取る謎の女に惹かれていく物語です。こちらは清水パートよりも最初からナンセンスの温度が高く、SFコメディの体裁をとりながら、恋愛や欲望のばかばかしさを前面に押し出しています。宇宙人の女に魅入られて生命力を奪われていく構造は、古典怪談における「女に取り憑かれて衰弱していく男」の物語とも重なります。

このパートの妙味は、マリッジブルーや欲望の揺らぎといった現実的な葛藤を、宇宙人という極端な存在に置き換えている点です。婚約者がいるのにもっと別の出会いがあるのではないかと夢想してしまう後ろめたさを、精気を吸う美女との遭遇として描くことで、男の露骨な欲望が見事に戯画化されています。

とはいえ『略奪愛』もまた、物語としてのまとまりを追求した作品ではありません。感情を丁寧に積み上げるというより、奇妙な設定と唐突な展開が連続し、全体がシュールな方向へ滑っていきます。そのため、ナンセンス映画として割り切りやすい反面、笑いのツボが合わないと単に散漫な作品に見えてしまう危うさがあります。豊島監督らしい奇妙な恋愛感覚は光るものの、それが映画全体の推進力として安定しているかといえば、やはり弱さが残ります。

二つのパートに通底しているのは、監督自身の私的な不安をB級映画的な設定へ変換しているという点です。清水パートでは「父親になる不安」が元ヤクザの物語として、豊島パートでは「結婚前の迷い」が宇宙人に誘惑される物語として表出しています。つまり本作は、幽霊と宇宙人の映画であると同時に、極めて歪んだ私小説的な映画でもあるのです。

これが、本作を単なるおバカ映画として片づけられない理由です。表面上はチープなギャグで進行しますが、その奥には家庭、結婚、父性、欲望といった個人的な問題が埋め込まれています。それを真面目に語るのではなく、あえてジャンルの記号に預けてしまうところに本作の歪さがあります。照れ隠しとしてのギャグ、逃避としてのSF、そして作家性の発露。これら複数の層が、未整理のまま同居しているのです。

演出面においても本作は非常に不安定です。怪談的な空気感や奇妙なコメディへの転がし方など、両監督の手腕が光る部分がある一方で、あえて粗さを残した映像のチープさやテンポのぎこちなさも目立ちます。これを「自主映画的な味」と取るか「完成度の低さ」と取るかで、作品の印象は大きく変わるでしょう。

加えて、ハリセンボンによる幕間パートも評価を分ける要素です。作品をバラエティ的な見世物としてまとめる役割を担う半面、映画への没入感を削ぐノイズにもなり得ます。劇場イベント的なゆるさとして楽しめれば味になりますが、一本の映画としての連続性を重視する人には引っかかりを覚える部分であり、結果として本作に「映画とバラエティの中間」のような質感を与えています。

本作の最大の弱点は、やはりその曖昧さです。ホラーとしては怖さが足りず、コメディとしては笑いが安定せず、ドラマとしては途中で瓦解してしまいます。ジャンルを横断するというより、ジャンルの間で足場を失っているような場面も少なくありません。特にシリアスとギャグの接続が滑らかでないため、どの温度感で受け取ればよいのか迷う瞬間があります。

しかし、その不安定さこそが本作の狙いでもあります。清水崇と豊島圭介は、商業映画で求められる「ホラーなのか、ギャグなのか」という線引きを、あえて曖昧にしようと試みました。怖いものは笑えるものでもあり、笑えるものは時に不気味でもある。その境界のあやふやさを、乱暴なまでに映画化してみせたのです。きれいに成功しているとは言いがたいものの、その乱暴さにしか生み出せない奇妙な熱量が存在します。

総じて本作は、洗練されたホラーでもSFコメディでもありません。物語は散らかり、演出は粗く、笑いも人を選びます。しかしその支離滅裂さの奥には、Jホラーを牽引してきた監督たちが自分たちの主戦場を一度破壊し、私的な不安や遊び心をぶつけようとした確かな痕跡があります。幽霊と宇宙人、怪談とSF、父性不安とマリッジブルー、恐怖と笑い、商業映画と自主映画。それらが整理されないまま押し込まれた本作は、「よくできた映画」というよりも「なぜこの形で作られたのかが気になってしまう映画」です。万人に勧められる作品ではありませんが、両監督のフィルモグラフィを裏道まで追ううえでは、極めて重要な番外地と言えるでしょう。怖い映画としてではなく、ホラーの作り手がその裏側を茶化し、自身の不安を混ぜ込んだ「奇妙な実験作」として観ることで、本作の輪郭はよりくっきりと見えてくるはずです。
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▫️Yahoo!映画★★★☆☆2.8
▫️T K評価: ★★★☆☆3.0
▫️映画TK通算:2456本 
▫️Filmarks通算:1321本
清水崇と豊島圭介が幽霊と宇宙人を題材して競い合う人気シリーズらしい。。

この短編集の中の『ロックハンター伊右衛もん( 清水崇)』ってのと『略奪愛(豊島圭介)』ってのを見る。。
ヒドイ。。いつもは普通に演技してる役者までヒドイ。。そうだ、これはワザととやっている?き、きっとそうだ、そうに違いない。。

『ロックハンター伊右衛もん』の方は<幽霊VS宇宙人>のテーマに則ってバカを突き抜けてたのでまぁ良しとしよう。。

この勝負、 清水崇の勝ち!(※消去法)

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